先日、卒業生さんが教室を訪ねてくれたので、町田の仲見世商店街にあるビリアニ専門店に行きました。彼女は約8年前の卒業生であり、学校を通して施設を見学し、介護の仕事を始めました。それからずっと同じ施設で働き続けているのですが、60歳になってから身体が思うように動かなくなり、なかなか昔と同じような重介護の仕事ができなくなってきたと言います。
それでも人手不足ということもあり、30代の職員と同じ一人の人材として同じ仕事をしなければならず、身体を壊してしまわないか心配とのこと。管理職の人もそこまで配慮してくれず、辞めようかと思うこともあるけれど、利用者さんが素敵な人ばかりでずっと辞められないでいるそうです。「このままだと介護の現場はどうなってしまうのでしょうか?」と彼女は問います。
なるほど、単なる人手不足だけではなく、介護の現場で働いている人たちの高齢化の問題も生じてきているのです。利用者さんたちは年々介護度が高くなり、身体介護の量と質が上がってきているにもかかわらず、介護職員も高齢化することで、かつてはできていたような重介護や働き方が難しくなってきているのですね。人手不足は目に見えやすい問題ですが、仕事の内容や質量の問題は目に見えにくいだけに、より根深いのです。
どの業界や職種でも、若い頃にはバリバリ働いていたけれど、歳を重ねてからは教える側に回ったり、全体をスムーズに回す(管理する)責任を伴う立場に就いたりしてキャリアチェンジをすることで上手くやってきました。年齢に応じて経験やスキルが変わってくるため、若い人たちにしかできないことは若い人たちが行い、年配の人が得意とすることは年配の人たちがするという、年功序列的なすみ分け(分業)ができるのです。ところが、介護の現場は人手が足りないこともあり年功序列が難しく、またスキルや経験が不明確なため分業がしにくいというダブルパンチです。
「身体が弱ってきている年配の職員は利用者さんとのコミュニケーションを取るなどすればよい」と卒業生は言います。まさにそのとおりで、身体が動く若い職員は身体介護を中心にバリバリ働けば良いのですが、「同じ給料をもらっているのに、ベテラン職員よりも私たちの方がたくさん働いている」という不満が出てきそうです。60歳になっても30歳の職員と同じ仕事をしなければならないとなると、自分が60歳になったときに困ると想像すれば分かると思いますが、若い人たちは30年後のことなんて考えて生きていないのです。今60歳の人たちが若かったころもそうだったはずです。その年になって初めて痛感することが多いのです。そう考えると、この先も、介護現場における適材適所はなかなか実現しそうにありませんね。
