「サムシング・エクストラ!やさしい泥棒のゆかいな逃避行」

久しぶりに福祉にまつわる映画を観た気がします。昨年の「ぼくが生きてる、ふたつの世界」以来ではないでしょうか。映画館はガラガラでしたが、「サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行」は期待どおりの良作でした。あらすじとしては、宝石泥棒の親子がひょんなことから障害者と取り違えられ(?)、障害者のサマーキャンプに参加することになってしまい、最初は突飛な言動を仕方なくやり過ごしていましたが、次第に打ち解けて、大切な心を取り戻すというストーリーです。これだけ聞くと陳腐な映画に思えるかもしれませんが、親子の風貌がドンピシャに役にハマって、なおかつ実際に障害のある人たちが演じているので、嘘っぽくないのです。

特に主人公である宝石泥棒の息子を演じるアルテュスは、なんとこの映画の監督と脚本も務めるコメディアンであり俳優だそうです。「彼らの素晴らしい創造力や魔法のような魅力を知ってほしい」と感じたアルテュスはInstagramで俳優の募集をかけ、実際に障害のある11人のアマチュア俳優たちを起用、そして自身も障害者役を見事に演じ、シリアスなシーンも演じ分けています。アルテュスが伝えたかった創造力や魅力が、この映画ではしっかりと表現されていると感じました。一人ひとりが面白いのです。

 

冒頭からサン・デグジュペリの「心が大切」という引用が出てきたり、パンフレットにも「多様性」や「寛容な社会」といった言葉が躍りますが、それは本当に本作品が伝えたかったことなのでしょうか。「多様性」という言葉には、自分と違った人たちを認めるべきという自己中心的なニュアンスを感じ、「寛容」という言葉にも、自分とは違う考えや価値観の人たちを受け入れるべきという自己犠牲のニュアンスを感じるのは私だけでしょうか。「多様性」や「寛容」なんて、わざわざ言うまでもない当たり前の話だと思います。

 

たしかにアルテュスが演じる息子が父親に対して、「寛容ではなかった」的な愚痴をこぼしますが、あれはもっとストレートに愛してほしいという意味です。父親も自分の子どもに愛情があったし、一緒になって遊んであげたかったはずですが(それは障害者の子とサッカーをして遊んで仲良くなったことからも分かります)、父親も若かったからか、生きていくので精一杯で、上手くできなかったのです。

 

映画の最後に、息子と父親がハグをするシーンがありますが、お互いにとって最高の瞬間だったはずです。宝石泥棒の親子はもともと寛容な心を持っていて、障害のある人たちとの交流でそれに気づかされ、心の交流が何よりも大切であることを彼ら彼女たちから素直に学んだのでした。サムシング・エクストラ(特別なこと)とは、障害のある人たちが持つ素直で健康な心のありようだと私は思います。

 

もう映画館での上映は終わってしまいますが、Amazonプライムやネットフリックス、U-NEXT等の配信サービスで公開された折には、ぜひご覧になってみてください!