一歩ずつ前進

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先日、新聞の片隅に「外国人介護福祉士128名合格」の文字を見て、飛び上がるほど嬉しかったです。合格率こそ39.8%と、前年に比べて1.9%の微増ということですが、128人の外国人が合格したという事実がまずは素晴らしいと思います。今年の試験から、問題にふりがなを振り、試験時間を1.5倍に延長するなど、できるだけ言語による不利をなくそうと工夫が施され、受け入れ側の意識も少しずつ前進しているように見えます。

 

今から7、8年ほど前、フィリピン人を対象としたホームヘルパー2級講座(現・介護職員初任者研修)を手がけました。すべて教室に通学してもらうスクーリング形式で行い、1ヵ月半ほど教室に通って学んでもらいました。受講生は15名ぐらいで、半分はフィリピンからやってきて日本で資格を取って働きたいという方々、もう半分は日本人の夫を持ち日本で生活をしているフィリピン人の女性たちという構成でした。今はダンサーとして生計を立てているという経歴の方が多かったのを覚えています。夜のお仕事ですから、眠い目をこすって頑張って勉強してくれました。

授業を進める中で、やはり大変だったのは言葉の問題です。話し言葉によるコミュニケーションにはほとんど不自由しない方が多かったのですが、一番難しいのは読み書きでした。特に漢字です。昔、タイ人にタイ語を少し教えてもらったことがありますが、タイの文字は私には象形文字のように見えました。日本の漢字だって、おそらくフィリピンの方にはそう見えるのでしょう。さらに困ったことに、介護には専門用語が少なからず存在します。たとえば、認知症とか褥瘡(じょくそう)とか。褥瘡なんて、日本人でも読み方が分からないですよね。こういったこと全てを含めて、介護や福祉ではなく、日本語を教えるのが最も難しいというのが実感でした。

 

唯一の救いだったのは、フィリピン人の彼女たちがとにかく明るいことでした。異国にやってきて慣れない言葉を使っての授業であったにもかかわらず、笑顔や笑い声の絶えない1ヶ月間でした。教えている先生たちも、「楽しい!」と言っていたぐらいです。よくコミュニケーションが好きで、開放的な性格をもつフィリピン人の女性たちは介護の仕事に向いていると言われますが、それは本当でした。たとえばデイサービスやグループホームなどの施設に、彼女たちがひとりでも入ったら、その場の雰囲気はより一層明るくなるだろうなと思いました。

 

2025年までにあと100万人近くの介護福祉士が必要になる時代において、たったの128人かもしれませんが、外国人の介護福祉士が少しずつ誕生している事実は、私にとっては大きな意味があります。彼女たちがどんな努力をして合格したか分かるからです。100万人もまずは最初の一人から始まります。この128名が介護福祉の現場でどのような活躍をするかで、これから先の未来のかたちも決まってくるのかもしれません。外国の人々を受け入れるだけでは解決できない問題ではありますが、この問題にふたをすることなく、困難を受け入れつつ、一歩ずつ前進していきたいものですね。