おむつ体験レポート

湘南ケアカレッジの「介護職員初任者研修」では、「おむつ体験レポート」を書いてもらっています。おむつ体験レポート??って思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、そうです、おむつを着ける体験を通して、感じたこと、思ったことなどを自由に書いてもらって提出していただきます。このレポートを始める前は、生徒さんたちは少し抵抗感があるかなと心配していましたが、いざやってみると、皆さん積極的に取り組んでくれて、それぞれに感じるところがあるようです。「貴重な体験でした」という感想をくれる方もたくさんいて、嬉しい限りです。

おむつを着けてみたときの着け心地や使用する前と後の変化について、写真入りのレポートを提出してくれた生徒さんもいました。その方は感想として、「不快さ、不自由さを感じました。人に取り替えてもらうことを想像すると、できるなら人にやってもらいたくない、なるべく便座で用をたしたい、と思いました。おむつを外した後に、トイレに行って用をたしたとき、『わあ、なんて快適なんだろう!』と感動しました」と書いてくれています。他のどの生徒さんたちも素晴らしいレポートを提出してくれますので、その熱い気持ちに応えられるよう、先生たちも一生懸命に読んで返しますよ!

 

ところで、排泄は人間が生きていく上で不可欠なものです。身体的な意味、心理的な意味、そして社会的な意味と、実は私たちが人間らしく生きていくために大切な3つの意味を持ちます。ですから、排泄に支障があると、日常生活に大きな影響を及ぼすのです。たとえば、これまでトイレで排泄をしていた人がおむつを着けると、これまでに行なっていた趣味や遊びなどの生きがいへの参加を取りやめざるをえず、次第に生きる意欲が低下につながる恐れがあります。

 

また、年中おむつをしていると、あせもやただれ、かぶれなど皮膚の問題が発生し、皮膚炎や褥瘡(じょくそう)などの病気につながります。さらに、おむつを着けると、動きが制限されるため、日常動作に支障をきたします。寝床から起き上がったり、椅子に座ったり、歩いたりという普段の生活の中での動作がしづらくなります。高齢の方は筋力が低下していることが多く、おむつを着けることで身体のバランスを崩しやすくなることもあります。

 

そして、介護者にとっても、介護量が増えるというマイナスがあります。たとえば施設において、数十人もの利用者のおむつを換えることになれば、多くの人手や時間や労力が必要ですが、限られた人員、時間等の中で行なうとすれば、介護職員の負担は大きいはずです。体を曲げた姿勢でずっと行なうとすれば、腰への肉体的負担も大きくなるはずですし、なんと言っても、介護職員のこころに与える影響は少なくありません。特に施設におけるおむつ交換は、自立支援とは程遠い、同じ介助を繰り返す流れ作業のようになってしまうことがあります。そんな中で、介護する人たちの葛藤や悩みが積もってゆくと、介護の現場にボディーブローのようにきいてくるのです。

 

「おむつは最終手段」であることを覚えておいてほしいと思います。歩ける人はトイレで、移動が困難でも座れる人はポータブルトイレで、寝たきりであったとしてもおむつが外せないか考えるということです。湘南ケアカレッジの「介護職員初任者研修」におけるおむつ体験レポートは、決しておむつを推奨しているわけではなく、おむつを着けない介護の大切さを、介護者に身をもって知ってもらうことを目的として行なっています。そんな介護者がひとりでも多くなれば、介護の世界は少しずつ変わってゆくのです。