初めての授業

この冬に新しく講師デビューする予定の先生たちと、昨日、今日と打ち合わせをしました。デビューと言っても、ひとりの先生は既に看護学校にて教鞭をふるっているので、湘南ケアカレッジにて初めて教えてもらうということです。それでも、新しい学校で初めて教壇に立つとき、誰もが緊張しますし、それゆえの初々しさが感じられます。私は話しながら、自分が初めて生徒の前に立った、あの日のことを、ふと思い出していました。

私の初めての授業は、20名ぐらいの生徒さんに対する2時間の講義でしたが、準備のために膨大な時間を費やしました。まずは教える内容を自分なりに整理するところから始まり、重要であるところとそうでないところを見極めていき、それから重要なところを骨子として、具体的な例やエピソードを加えていきます。そうこうしていると、あっという間に授業の日が近づいてきます。そろそろ話す練習を始めなければならないのに、内容が固まっていない状態です。あれだけ前から準備したつもりが、時の経つのは早いものです。そこから先は、実際に練習をしながら、内容も少しずつ変えてゆく同時平行。気ばかりが焦るのですが、いっこうに内容は固まらず、流暢に話せるようにもなりません。私はプチパニックでした。

 

初授業前夜、完璧にはほど遠い自分を私は笑うしかありませんでした。そして、今の自分にとってできる限りのことはやったのだから、あとは授業を楽しもうと開き直ったのです。当日の授業のことははっきりと覚えていません。とにかく真っ白になりそうな頭から必死で次の言葉をひねり出し、なんとか2時間を乗り切ったのでした。生徒さんからの質問を受けるコーナーでどうしようもなくトンチンカンな答えをしたことだけは覚えていますが、それ以外に自分が何を話したのか全く記憶がありません。

 

授業が終わったあと、大きな荷物を引きずりながら電車で帰りました。いつもは立っている私が電車の座席に座り込み、もう微動だにできないほど疲れ果てていたことを覚えています。授業に向けての準備に始まり、ずっと緊張した日々を過ごし、そして授業当日にはあらん限りのエネルギーを出し切ってしまった感じ。朦朧としながらも家に帰るや、ご飯を食べたり、シャワーを浴びることもせずに、ベッドに倒れ込んで朝まで眠りました。多くの人々を前に教えることは、こんなにもエネルギーを必要とするのかと初めて実感したのでした。

 

初めて人前で教えたあのときの自分を思い出すたび、30名前後の生徒さんを前に1日6時間の授業を行なう湘南ケアカレッジの先生方の凄さを改めて感じます。それはそれは膨大なエネルギーを要するはずなのですが、そんな大変さを微塵も感じさせない、パワフルかつユーモア溢れる授業。それでも忘れてはならないのは、今はどんなに素晴らしい授業を展開するベテラン先生にも、必ず初めての授業があったということです。これからデビューする先生たちには、誰もが通ってきた道であることを知り、最後の最後は自ら楽しんで授業に臨んでもらいたいと思います。