好きな漫画が「タッチ」や「漂流教室」、「アドルフに告ぐ」という時代錯誤な私が、朝日新聞で紹介されていた記事がきっかけで、漫画「ヘルプマン」を手に取ってみることになりました。結論から言うと、ものすごく面白いです。このような漫画(しかも介護をテーマとした)が、2003年から連載されていて、今の今まで読んだことがなかったなんて恥ずかしいとさえ思いました。ちょうどそんな折、ある先生が偶然にも授業の中でも取り上げていて、「指定図書ですね」とおっしゃっていました。私も本当にそう思います。
主人公は高校3年生の恩田百太郎(おんだももたろう)。進路に迷っていた時期に、たまたま親友が介護士になることを知ったのをきっかけとして、特別養護老人ホームで働くことになりました。最初は、どうしても入浴を拒んでしまうお婆ちゃんにお風呂に入ってもらおうとするのですが上手くいきません。試行錯誤を重ねる中で、介護の奥深さや高齢社会の現実を知ってゆく主人公…。第1巻は「介護保険制度編」、第2巻は「在宅痴呆介護編」と1巻ごとにテーマが決まっていて、主人公の成長と共に、読んでいる私たちも介護の勉強をさせてもらっているようです。
「ヘルプマン」のどこが素晴らしいのかと考えてみると、現実に即したリアルな描写力とそれぞれの登場人物たちの葛藤や心情が綿密に綴られていることでしょうか。奇をてらったわけではなく、日常のどこにでもありそうな舞台設定でありながら、実にドラマチックにストーリーは進んでいきます。これは作者である、くさか里樹さんが、漫画家になる前に授産所で介護職員として働いていたこともあって、自らの経験を元に描いていることが大きいですね。そして、物語の根底には人間愛があり、涙してしまう場面も少なくありません。
大人の鑑賞に堪える漫画、いやこれこそが大人の漫画。介護に興味がない人にもぜひ読んでみてと勧めやすいですね。実は私もまだ2巻までしか読んでいないのですが、次の巻が読みたくて仕方ありません。現在24巻まで発売中ですので、もしかすると生まれて初めての大人買いというものをしてしまうかもしれません(笑)。