運が良かったこと

湘南ケアカレッジが開校し、「介護職員初任者研修」を始めてから、およそ1年が経とうとしています。全力疾走してきたせいか、本当にあっという間に年月が流れてしまったように感じます。これまで一緒に最高の福祉教育の学校づくりを手伝ってくれた先生方も、おそらくそう感じているのではないでしょうか。多くの生徒さんたちとも巡り合うことができ、私たち湘南ケアカレッジにとっても最高の財産となりました。今こうして振り返ってみると、湘南ケアカレッジが立ち上がるにあたって、運が良かったことがたくさんあります。

 

運が良かったことを挙げてゆくと両手では足りませんので、今回は授業内容について書きます。「介護職員初任者研修」は厚生労働省によって決められたカリキュラムを元に構成されますが、各科目の中で、どのような授業を行なうかは学校によって異なります。たとえば、カリキュラムとして食事の介助の授業を行なうことは決められていても、何を、どのように教えるかといった授業内容は、各学校に任せられています。カリキュラムこそ同じでも、授業内容は学校の創意工夫次第で変えられるということです。

 

いろいろな学校の授業内容を見てきた(または聞いてきた)経験からすると、それほど大きくは変わらなくても、よく見ていくとかなり違うというのが実感です。同じテキストを使っていたとしても、学校や先生の考え方ひとつで、生徒さんに伝わる内容は大分違ってきます。私たちの姉妹校である大阪福祉総合スクールと湘南ケアカレッジでさえ、細かい授業内容には違いがあります。細部の違いが全体の印象を変えてしまうこともありますし、逆に授業全体に対する考え方から細かな差異が生まれてしまうということもあります。

 

湘南ケアカレッジの運が良かったのは、「介護職員初任者研修」から始められたこと。最初は大変でしたが、今になってみて、それはとても良かったのだと思うのです。なぜなら、前身である「ホームヘルパー2級講座」をやっていなかったからこそ、ゼロから「介護職員初任者研修」をつくり上げることができた。もし「ホームヘルパー2級講座」をやっていたら、その内容のほとんどを引きずってしまっていたかもしれません。私たち人間は楽をしたい動物なので、何かを変えることを嫌い、過去に行なっていたことをそのままやりたいという心理が働き、そういった力学に抵抗できる学校は少ないはずです。

 

たとえば、入浴の授業において、湘南ケアカレッジではケリーパッドを使った「洗髪」を行ないません(簡単なデモのみ)。ホームヘルパー2級講座では2~3時間かけて洗髪の練習をしていた学校がほとんどですが、それをそのまま引きずってはいけないと思うからです。なぜなら、現実的に考えて、介護職員がケリーパッドをつくって、利用者の頭を洗ってさしあげる状況はほとんどないからです。もっと大切なこと、たとえば手浴であったり、足浴の手順であったり(介護福祉士の試験にも出題されました)、浴槽に入ってもらう介助の方法であったりを、時間を掛けてしっかりと学ぶべきです。他の科目においても同じ。それこそが、実践的かつ生きた「介護職員初任者研修」だと思います。