卒業生に勧められて読んでみた本です。介護者同士が悩みを打ち明け合い、情報を共有できる「つどい場さくらちゃん」をNPO法人として運営している丸尾多重子さんと、在宅医療に携わる医師、長尾和宏さんの著者ふたりが「まじくって」(いろいろな人が混じり合い、しゃべくり合うの造語)、介護と医療の世界の現実と理想を語っています。過激なタイトルではありますが、内容は実にまとも。なぜ歩いて施設に入所したのに、たった数ヶ月で寝たきりになるのか?在宅介護に必要な心構えから認知症の薬の話、良い介護施設やケアマネの見分け方まで、それぞれの経験を踏まえつつ、介護の世界がもっと良くなってほしいという痛切な願いを込めて提言してくれています。
「ボケ」を「認知症」と呼び、病気の枠に当てはめたことから日本の悲劇は始まり、介護保険制度ができたことで、介護がビジネスになったという考えには共感します。本来は地域でお年寄りを見るためにできた介護保険制度によって、施設に預けるという流れがより加速されたという矛盾。その根底には、将来自分が介護を受けることになったとき、家族に迷惑をかけたくないから病院や施設に行くという深層心理があるのです。そのことに対して、著者らはこう話します。
丸尾
「たしかに娘に迷惑かけたくないから、施設に入るっていうケースもありがちだけど、それもおかしな話だと思いますよ。子どもに迷惑かけたくないっていう遠慮が、家族の絆を邪魔することもある。『後悔しない介護』って一体何なんやろうって、いつも考えています」
長尾
「それは認知症に限らず、どの終末期も一緒やけどね。本当は家で死にたいけど、家族に迷惑かけたくないから病院で死ぬ」と考える人、いっぱいいます。日本が核家族社会になって久しいが、家族に迷惑かけるという気持ちが、前面に出すぎているのが今なんよ」
丸尾
「家族を介護する、看取るってことは、ものすごい貴重な人生経験なのにね。悲しい経験には違いないけど、結果的には人間性が豊かになるのに」
丸尾さんの最後の言葉には救いがありますね。他にも、ここには引用できないような厳しい話や目をそむけたくなるような状況も語られています。それは確かに早急に改善していかなければならない介護・医療の負の部分です。
この本を紹介してくれた卒業生は、つい最近、障害者の支援から高齢者の施設に仕事を移した方で、より一層、介護の現場(特に施設)の問題点を強く感じるのでしょう。ずっとその世界や場所で働いていると、当たり前のことのように考えてしまうことでも、外からの新しい視点で見ると違和感を覚えることはたくさんあると思います。いつまでも新鮮な気持ちを保ちながら、ひとつずつ、少しずつ良い方向に変えていき、自分たちも介護してもらいたいと思えるような、快適な介護施設をつくってもらいたいと心から願います。