伝える姿勢

立って話すこと。それは先生の基本中の基本です。講義(座学)の授業の際、生徒さんたちは座って話を聞き、先生は1日中立って話をします。決して楽ではありませんが、自らの存在をもって語ろうとするとき、立って話すことは自然な姿勢です。過去の名演説やスピーチを観ていただいても、座ってなされたものはひとつとしてありませんよね。先生によって教えるスタイルは様々ですが、もし多数の相手に自分のメッセージを伝えたいと願えば、自然と立って話すことになるのです。

 

教えるという行為は、トータルコミュニケーションの最たるものです。コミュニケーションには、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション、そして準言語的コミュニケーションがあります。言語的コミュニケーションとは、文字や言葉によるものであり、点字や手話もこれにあたります。非言語的コミュニケーションとは、態度や表情、姿勢や身振り手振り、準言語的コミュニケーションとは、話す際の声の強弱や音の高さ、スピードなどです。これらを全て含めてトータルコミュニケーションと称します。

 

実は、私たちが話す言葉で伝わっているのは、せいぜい7~8%だと言われています。それ以外の90%以上は、非言語コミュニケーションや準言語コミュニケーションによって伝わるのです。つまり、話す内容がきちんと相手に伝わるためには、態度や表情、姿勢や身振り手振り、そして話す際の声の強弱や音の高さ、スピードなどが最も大切ということになります。座って教えるのがなぜ良くないかというと、身体全身を使って伝えることができなくなるからです。立って教えることで、話す言葉だけではなく、ありとあらゆる手段を使って、生徒さんたちとコミュニケーションをすることが可能になるのです。

 

さらに湘南ケアカレッジには教卓がありません。そう、学校にあった、あの教卓です。なぜ教卓を使わないかというと、生徒さんと先生の間に教卓があることによって、ある種の壁になり、コミュニケーションが阻害され、伝えたいことが伝わりにくくなってしまうからです。昔は、先生と生徒との立場を区別するために、先生は一段高いところから、教卓に両手をつくようにして話していましたが、もう今はそういった時代ではありません。たしかに教卓の中に色々と物が置けたりして便利なのですが、最も大切なのは先生と生徒のコミュニケーションです。

 

とはいっても、さすがにテキストをずっと持って授業をするのも辛いということで、湘南ケアカレッジではちょっと工夫をして、譜面台を置くことにしました。先生と生徒さんたちとの間に何もない方が伝わりやすいことが科学的に証明されている以上、できるだけ間に何もない状態でお伝えしていきたいと思うのです。もし未だに教卓を使っている学校があったら、ぜひ思い切って取っ払ってみてください。それだけで、先生方がより生き生きと話せるようになりますし、生徒さんたちとの距離も近くなって、誰もが明るい笑顔で授業を受けられるようになるはずですよ。