今から10年以上前に発売された本ですが、改めて読み直してみると、新たな気づきがたくさんあります。当時としては革新的な考え方であり、ようやく時代が追い付いてきたと見ることもできますし、人がどう生きるかというテーマに関して、本質的なところは10年前から変わらないと考えることもできます。ご存じの方も多いと思いますが、著者であるパッチ・アダムス氏は道化師として往診をし、多くの患者たちに笑いやユーモア、そして勇気を与えてきた医師です。1998年、「パッチ・アダムス」として映画化され、ロビン・ウイリアムズが主演、大ヒットとなり、その存在と思想を世に広めました。
この本には、こころとからだのつながりを前提として、健康と幸せを手に入れる方法論が書きまとめられています。健康について考えてみることから始まり、パッチ・アダムス氏は「健康とは、幸せで精力的な生活を送ることのできる状態」と定義します。健康とは病気のない状態ではなく、自分の持っている能力を精力的に活用し、楽しく生活することと考えるのです。健康に生きていくために、以下のような問いかけをします。
・信仰を持っていますか?
・人を愛せますか?
・ユーモアを忘れていませんか?
・驚きながら生きていますか?
・好奇心を持っていますか?
・創造力を働かせていますか?
・自然と共に暮していますか?
・リラクゼーションをしていますか?
・コミュニティー意識を持っていますか?
・情熱を持って生きていますか?
・エクササイズをしていますか?
・希望を持って生きていますか?
・想像力を働かせていますか?
・平和を心がけて生きていますか?
・家族の存在に感謝していますか?
・奉仕の精神を眠らせていませんか?
・友情に感謝していますか?
・栄養に気をつけていますか?
・教訓を持っていますか?
・自尊心を持っていますか?
こうして改めて問われると、できていること、できていないこと、忘れてしまっていたことなどあり、ドキッとさせられますね。当たり前のようでいて、当たり前でないことばかりです。これらの問いかけに基づき、実際に行ってみることも具体的に提案してくれています。そして、話はお見舞いに行くことに移り、お見舞いに行くことで入院生活を送る患者さんを癒すことができるとパッチ・アダムス氏は言います。お見舞いに行くことが治癒力を生むとは、まさにその通りだと思います。そのためにも、私たちはお見舞いに行くときに気をつけることや心構えを知っておくべきだと語るのです。最後に、お年寄りを見舞う場合の心構えを引用して終わりたいと思います。
ここで鍵となるのが、とにかく顔を見せに行くことである。老人の多くが孤独で、家族や社会との接触を持たずに、ひとり寂しく暮らしている。老人ホームであまり満足せずに暮らしている人も多いようだ。(中略)じっくり向き合って、お年寄りの話に耳を傾け、あなたの話す話題や世の中の動きに追いつかせよう。でも、あまりお年寄りを急かさないように。彼らのちょっと縮んじゃった世界に入って行っても、うまくやっていけるコツを見つけよう。彼らに合わせてゆっくり歩いたり、大きな声で話すことを心がけよう。年をとったからと言って、好奇心や情熱が衰えたなんて決めつけちゃだめだよ。
あきらめの気持ちや、自分が重荷になっているという感情を、やっとの思いで乗り越えている彼らの目が輝きだすまで、辛抱強く見守ってあげてほしい。まるで存在しないかのように無視され、見て見ぬ振りをされたと感じたことのあるお年寄りは多いようだ。お年寄りを尊敬し、彼らの生き様や知恵の言葉に興味を抱こう。(中略)お年寄りに触れ、一緒に歌い、彼らの血が騒ぐようなことをしてみよう。彼らのいきいきとしてくる様子が見られるだろう(そしてきっと、あなたの顔にも彼らと同じ表情が浮かんでいるはず!)。