介護者としての身だしなみ

「介護職員初任者研修」の第6日目から、本格的に実技演習が始まります。その日の最初に、これから実技演習に臨むにあたっての基本である身だしなみについて、チェックシートを使いながらお話しします。実際の現場に出ても安心・安全に活躍していただけるように、教室の中から正しい介護者としての身だしなみで臨んでいただくことになります。とはいっても、中学校や高校の規則のように、あれはダメ、これもダメというスタイルではなく、ひとつ1つ理由や根拠をお伝えしながら、介護者としての身だしなみについて知っていただきたいと思います。

 

まずは服装について。服装は動きやすく、安全で、清潔感のあるものを心がけてもらっています。これら3つの要素を満たしていることが、介護者としての正しい身だしなみです。もう少し具体的に掘り下げていくと、たとえばジーンズは避けてもらいます。なぜなら、ジーンズ生地は伸縮性のないものが多く、動きにくい面がありますし、高齢者の方々の中には、「敵軍がはいていた服」、「作業着」というイメージを持たれている方もいます。嘘のような本当の話ですが、ズボンひとつ取ってみても、知っておかなければならないことがあるのです。基本的には綿パンやチノパン、もしくはジャージをお勧めしています。

 

また、時計やイアリングや指輪などの装飾品は外して臨んでいただきます。これはもちろん相手を傷つけないため、そして自分も傷つかないためです。介護をする際には身体的な接触が多いため、できるだけ何も身に付けない状態が理想的です。たとえば指輪をしていたことで、利用者の方が金属アレルギーを起こしてしまうこともありますし、イアリングが利用者の服などに引っ掛かって自分が痛い思いをすることがあるかもしれません。それ以外にも、長い髪は黒か紺のゴムで束ねる、匂いのする香水などはなるべくつけない等、介護者としての心構えも踏まえてお伝えしていきます。

 

これから介護職員初任者研修を受ける方にとっては、早くても3年後の話になりますが、介護福祉士の国家試験においても、身だしなみは減点対象となります。試験室に入ると、黒いスーツを着た3名の試験官たちに、頭のてっぺんからつま先まで、介護者としての正しい身だしなみができているかどうか細かくチェックされます。国家試験に合格するためにということではありませんが、普段からきちんとした身だしなみを心がけることが大切ですね。

 

身だしなみについて話していくと、まるでおしゃれをするなと言われているように聞こえるかもしれませんが、決してそうではありません。身だしなみを考える上で、まず心がけるべきなのは、相手(利用者)にとって心地よく、安心で安全であるということです。相手(利用者)を主体に考えた上で、自分の個性やセンスとのバランスを取った身だしなみをすることが大事だと思います。そして、チェックシートの最後には、「体調は万全ですか?」、「疲れが顔に出ていませんか?」という笑顔の項目があります。笑顔は介護者としての身だしなみのひとつなのです(*^-^*)