外国人介護士の受け入れについて

今年の1月と3月に行われた介護福祉士の国家試験にて、今年度は78名の外国人介護福祉士が誕生しました。

 

とはいえ、昨年の128名と比べて合格者数は減り、合格率も36.3%と前年よりもやや下がったように、全体的な流れとしては低調であり、介護の業界における人材不足を解決する大きな流れにはなっていないのが現状です。

賛否両論あって当然だと思いますが、移民の問題を含め、外国人受け入れの問題は、言葉の壁だけではなく、どうしても偏見に妨げられてしまうところがあり、日本という国においては難航してしまいます。たとえば、介護福祉士会による、外国人受け入れへの反対表明は、要約すると以下の通りです。

 

・予防からターミナルケアまで幅広く対応するのが介護職員の仕事であり、「介護は単純労働ではない」。外国人を受け入れると、サービスの質の低下を招き、国民が安心して介護を受けることができなくなる。そして、介護職のイメージが下がり、社会的評価が低くなり、処遇が改善できなくなる。

 

・介護の現場では、ちょっとしたひと言や些細な変化で気持ちを汲み取るような繊細コミュニケーション能力が必要とされるので、日本語の能力が低い外国人が利用者と上手くコミュニケーションを取れるのかどうか心配。

 

 (参考)介護福祉士会の石橋会長、養成課程見直しの先送りや外国人受け入れを批判→ http://www.joint-kaigo.com/social/pg565.html

 

もっともらしいことを言っていますが、外国人に対する偏見に満ちています。なぜ外国人が仕事をしていると、介護が単純労働になってしまうのでしょうか。今やたとえばIT業界においても、インド人を筆頭にした優秀なプログラマーやSEたちが日本企業で仕事を始めています。誰から誰でも受け入れるわけでなく、きちんとした過程を経て受け入れる仕組みをつくっていけば、優秀な人材が入ってきてくれるはずです。言葉の問題は確かにありますが、言葉とコミュニケーションの問題をすり替えてはいけません。コミュニケーションという大きな枠で考えると、日本人よりも非言語コミュニケーションに秀でている外国人はたくさんいると思います。

 

湘南ケアカレッジにも「介護職員初任者研修」を受けて卒業した外国人は数名いて、とても介護の世界に相応しい方々でした。日本人と同じテキストを使い、同じ添削問題や修了問題を解いて、自らの力で修了証明書を得ました。もし自分が第2外国語で研修を受けることを想像するだけで、どれだけ大変なことか分かると思います。そこまでの苦労をしてまで介護の勉強をして、資格を取り、現場で働きたいと思う外国人の方を私は素直に尊敬します。

 

そういった人たちを1人でも知っていれば、上のように「介護は単純労働ではない」などと声高に主張することはないでしょうし、むしろどうすればそういった問題を解決できるか考えるはずです。もっと心をオープンにして、全力でサポートしていくぐらいの姿勢を見せないと、彼女たちがわざわざ日本に来てくれなくなってしまいますよ。むしろ、外国人の介護士が安心して働ける環境を作り、できないことはサポートしていこうとする発想とマインドこそが、日本人の介護職の働きやすさにもつながっていくのではないでしょうか。

 

参考リンク

・「精一杯頑張った」と喜びの声、EPA介護福祉士候補者は78人が合格→ http://www.joint-kaigo.com/social/pg506.html