私たちの責任

秋休みの最終日、私の携帯電話が鳴りました。誰だろうと思って電話を取ると、「以前、そちらでお世話になった者ですが、困ったことがあったら、いつでも来てという言葉をふと思い出して、教室に立ち寄ったんですけど、誰もいなくて…」という若い男性の声でした。恐る恐る名前を聞いてみるとKさんでした。介護職員初任者研修の中ではこれといって個人的な話をしたわけではないのですが、不思議なことに、その名前を聞くとすぐに顔が思い浮かびました。


「ごめんなさい、今日は学校がお休みなんです。でも、どうしたのですか?お仕事頑張っています?」と聞くと、「今、介護関係の仕事をしているんですけど、僕の思っている介護とは違って、辞めて違うところを探そうかなと思っています。それで相談できればなと思って…」と彼は答えてくれました。なんとなく、これは重要な話かもしれないと感じ、遊びを途中でやめて(笑)、「今からそっちに行くので、ケアカレの前で30分後に待っていてもらえませんか?」と伝えたところ、「はい、待ってます」とのこと。私は急いで学校に向かいました。

 

彼はケアカレの前に立って待っていてくれました。半年ぶりの再会でしたが、全然久しぶりじゃない感じだねと言葉を交わしつつ、1階のカフェに入りました(こういうときに便利です)。電話で話したときの感じよりも、彼は明るく元気そうで、それほど行き詰っている感じではないのに安心しつつ、湘南ケアカレッジを卒業してから、現在に至るまでの経緯を聞いてみました。彼は3月の中旬に研修を修了し、すぐに4月からとある特別養護老人ホームで働き始めたそうです。

 

働き始めたきっかけは、介護職員初任者研修を受けたことだそうです。実は彼は大学で教育を専攻していたので、学校の先生になろうと思っていたそうです。ただ、教員になるための教職(課程)において、介護施設での実習が義務付けられているのですが、その実習が印象に残っていて、介護の世界も知りたくて、ケアカレに来てくれたのです。このまま学校の先生になるか迷いながらも、大学生活最後の最後で出会った湘南ケアカレッジの介護職員初任者研修で、自分も介護の仕事がしたいと強く思い、介護の世界に飛び込む決意をしたそうです。そして、先生方から教えてもらった介護と現状の施設のそれが全く異なることで悩み、前向きな相談をしに来てくれたのでした。

 

彼の選択が正しかったかどうかは、これからの彼の行動にかかっていますが、私たちが彼の人生に何らかのきっかけをもたらし、影響を与えたことは事実です。教える人は大したことだと思っていなかったことが、教えられる人の心に強く残り、何かを変えることが多々あります。それは私が子どもたちを教えてきた経験からもはっきりと言えます。「あのとき、先生がああ言ってくれたことがきっかけで、私は(僕は)○○したんだよ」と言われることが、実際にあるのです。

 

だからこそ、人の上に立つ立場にある人以上に、教える立場にある人は襟を正さなければならないと私は思うのです。この話を聞いたとき、あのときそのまま帰ってもらわずに、待ってもらってでも、会って話ができて良かったと思いました。彼にはキャリアに対する考え方をアドバイスし、実習ボランティア先を紹介し、他の施設を見てみることで視野が広がるかもしれないと伝えました。私たちにできることは小さなことですが、責任は大きいのです。