「平均寿命105歳の世界がやってくる」

ネタのようなタイトルですが、実際に起こる未来です。遺伝子解析や再生医療の発展に伴い、私たちの知り得ないところではすでに、平均寿命105歳の世界が猛スピードで近づいてきているのです。2011年時点での日本の男性の平均寿命が79歳、女性が85歳ですから、この先、20~25歳ぐらいは寿命が延びる計算になります。それはいつの話なのかという問いに対しては、著者は明確な答えを用意していませんが、そう遠くない未来の話、いや私たちが思っているよりもかなり近い未来の話であることは確かなのです。


その未来を喜ぶべきか、憂うべきか、今生きている誰もが直面せざるをえない大きな問題です。かなり多岐にわたる問題ですから、私自身が論じるよりも、本書の要点や重要だと思われるポイントを抜粋して引用してみたいと思います。そうすることで、私にとっては忘備録として、皆さんにとっては情報や知識のひとつとして(さすがにこの本を読もうと思う方は少ないと思いますので)活用してもらえるはずです。


・日本では、すでに5人に1人が高齢者だ。2050年には5人に2人に倍増する見通しだ。生産に従事しない若年層を人口から差し引くと、勤労者と高齢者の比率はやがてほぼ1対1になる。言い換えれば、勤労者1人が高齢者1人分の年金および医療費を負担しなければならないことになる。この巨額の費用をアメリカの場合に当てはめれば、社会保障と医療費の合計で年間2万5000ドルを各勤労者が支払うことになる。

 

・人間の頭脳の多様な能力は、地球上の生物のなかでもきわめてユニークだ。加齢に伴う病気さえなければ、骨や筋肉は高齢になってもかなり機能を保っている。もし頭脳も健全な状態であれば、人間は80代でも生産力を発揮できる。老化に関して最も誤解されている点の一つは、老齢になると頭脳の能力もかなり衰えると誰もが信じていることだ。

 

・老人医療保険予算の28%は、人生最後の1年に使われ、その総額は年間1500億ドルほどに達する。この金額は、アメリカの教育者や国土安全保障省の年間予算に匹敵する。最後の1年のうち、とくに最後の2か月に集中する。この点に関しては、さまざまな意見があるだろう。とことんまで延命を望む人もいるだろうし、そう望む権利もある。いろいろ議論して、死にゆく人と看取る人たちの最期の対応について意識を高めておく必要があるだろう。カネだけの問題ではない。同情心は個人によって異なるので、自然な尊厳死を望む人はその方針を貫けばいい。

 

・長寿が一般化するにつれて、年金の支給開始時期を遅らせ、現状を維持していくためには、退職後の生き方を変えていくことがぜひとも必要だ。定年の年齢が変われば、早目に退職した数百万の世帯は、数年後に退職金の貯蓄が情けないほど不十分であることに気づくに違いないが、あらかじめ対策を講じるよう仕向ける必要がある。退職後の生き方の文化は早急に変えなければならない。

 

・将来の不安に備えて投資を勧める本が数多くあるが、どこにも書かれていない基本財産が、本人および家族の健康だ。健康を保っていられれば医療費の出費が抑えられるし、異論はあるかもしれないが、何にも増して重要な人的資本が確保できるからだ。最も重要な基本点は、あなたが最高レベルの健康を維持していくことだ。多くの人にとって、それは体重を減らすこと、運動すること、望ましい食事を摂り、予防医学や健康診断に大いに積極的な姿勢を見せることだ。そして自らがロールモデルになって、配偶者(あるいは子どもや親たち)を引き込むことが望ましい。