誰のための仕事?

自分は誰のために仕事をしているのだろう、と思うことがあります。つまり、誰かの役に立てているのだろうかと。以前にも書きましたが、私はこれまでたくさんの先生方に助けてもらい、なんとか今までやってこられました。その都度思うのは、自分のためではない、誰かのために身を削ってくれる人が、この世界には確実にいるということです。そして、そういう気持ちや行動こそが、深い感謝の念と共に、たくさんある思い出の中でも色濃く私の人生に刻まれています。そうした偉大な人々を見るにつけ、果たして私は誰かの人生に刻まれるような仕事をしているのだろうか、誰かの役に立てているのだろうか、と自問せざるをえません。


私が湘南ケアカレッジをつくったのは、福祉教育が好きだからです。そして、介護・福祉教育にたずさわっている先生たちが好きで、介護・福祉について学ぼうと思って学校に来てくれる生徒さんたちが好きで、そういった人々が集まる学校という空間が好きだからです。その想いは大手介護スクールで働いていたときから変わっていませんし、自分の手でより素敵な学校をつくりたいと思っています。そんな学校をつくることで、私もその一員に加えてもらいたいという一心です。でも、それって、自分自身のためだったのかもしれません。

 

たとえ最初は自分のために学校をつくったとしても、今は少しずつ大きく気持ちが変わってきています。湘南ケアカレッジで教えてくれている先生方が心から楽しんで教えて活躍してくれる場を失くしたくない、むしろもっと増やしたい。湘南ケアカレッジで学んで巣立っていった卒業生のためにも、いつまでも胸を張れるような学校でありたい。誰かのためにというレベルには到底達していませんが、少なくとも私のための仕事ではなくなってきています。

 

それでいいのだと思います。もしかしたら、私の尊敬する先生方も、最初は自分のために仕事をしていたのかもしれません。最初の動機は、自分が生活していくお金のため、家や車のローンの支払のため、地位や名誉のためなどなど、様々な自分のためであったかもしれませんが、仕事や人生を重ねていくうちに、知識や技術や情熱が蓄積され、そのうちに誰かのために仕事ができるようになったのだと思います。そう考えると、誰かのためにする仕事は誰にでも出来る仕事ではないということになりますね。

 

私たちは、大人になってから体が動かなくなるまで、何らかの仕事をして、人や社会と関わって生きていきます。そうやって生涯にわたって仕事をしていくのであれば、自分や自分の家族のためにする仕事ももちろん大切ですが、できることならば誰かのための仕事をしたいと思います。それは誰を喜ばせ、幸せにするための仕事なのか、誰を助け、救うための仕事なのか、いつも心のどこかで考えていたいものです。