教え方のサイクル

昨年末、とある介護のスクールで行われている実務者研修(医療的ケアの部分)を見学させてもらいました。私自身、これまで福祉用具専門相談員養成講座、福祉住環境コーディネーター講座、知的障害者ホームヘルパー養成研修、精神障害者ホームヘルパー養成研修、視覚、全身性障害者ガイドヘルパー養成研修等、両手で数えきれないぐらいの研修や講座を立ち上げてきた経験がありますが、実務者研修にたずさわるのは初めて(2013年度から創設された研修なので当たり前ですが)。頭で考えるよりも、実際に行われている現場を見ることによって得るものは大きいと思い、無理を言ってお願いしました。


最初に、実務者研修の医療的ケアに関する情報を向こうのスタッフの方々からヒアリングし、その後、実際の授業を見学させてもらいました。研修全体の印象としては、とても丁寧に運営されていると思いました。その学校は喀痰研修も行っているので、そのノウハウを活かしているとのこと。正直に言うと、私がかつて大手スクールで働いていた経験上、もっと大ざっぱに(悪く言えばアマチュア的に)やられていると思っていたのですが、見せていただいた書類やスタッフの方の受け答え等を通して、プロフェッショナルさが感じられ、同じ仕事をする者として嬉しく思いました。学ばせていただくことが多く、大変貴重な時間となりました。

 

ただひとつ気になったことは、授業の中で褒め、認めがほとんどなかったことでしょうか。たん吸引や経管栄養の実習のテストという授業であり、厳しさや正確さが求められる緊張の中であったのは確かですが、もっと出来た(出来ている)ことを褒め、認めていく雰囲気や仕組みがあればさらに良い研修になると感じました。ひと言で言うと、エンターテイメント性がなく、生徒さんたちはもっと楽しく学んでも良いのではないかということです。厳しさや真剣さの中にも、楽しさや喜び、そして感動があるべきです。

これは授業や講師の雰囲気というよりも、教え方の問題だと思いました。教え方にはサイクルがあって、これはどの時代でもどの国でも不変のものです。褒め、認めがない授業というのは、このサイクルの図でいうと、①から③に飛んで、また①に戻るという感じです(①⇔③)。先生(教える側)としては、出来ないところを見つけて、教えたつもりなので、そこで自己満足してしまうのですが、生徒さん(教わる側)としてはできないことを指摘されただけにすぎません。④実際に(生徒さんに)やってもらって、⑤できたことを褒める、認めるの段階まで進んで、初めて教えるサイクルは完結し、知識や技術は定着するのです。そして⑤のところにこそ、授業の楽しさや、生徒さんそして先生の喜びや感動があるのです。このブログをお読みになっていただいている皆さまも、誰かに何かを教える、伝えるときには、ぜひ参考にしてみてください。

 

他の学校や授業を見学することで、学ばせてもらうことは多いです。良いところは素直に取り入れ、また自分たちの学校の良さを再発見することもあります。湘南ケアカレッジは、資格を売るのではなく、福祉教育を提供する学校でありたいと願います。そのためには、教える内容だけはなく、教え方にも目を向けていく必要があります。これからも生徒さんたちに、「湘南ケアカレッジに来て良かった」、「世界観が変わった」と言ってもらえるような研修をつくっていきたいと思います。