ほんの少しの自立支援

お盆やお正月に実家に帰省すると、老老介護の実態を見せつけられます。私の母は65歳で、その母である祖母は90歳になろうとしています。少しずつ認知症が進行していて、最近は私が誰かわからなくなってしまうこともあり(名前は覚えてくれているようです)、笑顔も少なくなってきてしまいました。母が大きな病気をしたこともあって、今は近くの有料老人ホームに入所しつつ、ときどき自宅に戻ってくるというリズムで介護しています。私がこういった仕事をしているため、介護に関するアドバイスを求められることもあるのですが、現実を目の当たりにすると、できることとできないことが見え、在宅介護はとても難しい問題だと感じます。それでも懸命に祖母を介護する母には頭が下がる思いです。


そういえば、私の祖母も曾祖母を長い間介護してきました。曾祖母つまり私のひいばあちゃんは、さすがに90歳を越えるあたりから寝たきりにはなっていましたが、意識や認知ははっきりしており、寝床の傍でいろいろな話をしました。それでも、晩年はあらゆる面で介護が必要になり、今ほど介護サービスが浸透していなかった時代でもあり、祖母は大変な献身をしたそうです。自身も疲れが溜まって、身体を壊したりしました。そして、曾祖母と祖父の死といった喪失体験がきっかけとなり、認知症が顕在化してしまった面はあるはずです。

 

そういった祖母の背中を、誰よりも母はよく知っているのだと思います。背中とはつまり尊敬の念であり、尊敬は受け継がれるのです。もちろん、祖母のように全てを引き負うということではなく、時代は移り変わり、介護サービスを利用しつつ、できることは在宅でという流れで良いのだと思います。全てを施設に任せてしまう、また逆に全てを1人で引き受けてしまうという極端な介護に走らならないことが大切です。祖母ができることはやってもらい、できないところだけサポートしてあげて、と母にはアドバイスしました。

 

たとえば、食事をするときも、ご飯を取って口に入れて食べさせてあげていたので、祖母はどこまで出来るのか聞いてみたところ、口の近くまでは食事を運ぶことができるとのこと。そこで自分で食事を取って、口の近くまでは運んでもらい、そこから最後に口に入れて食べるまでをサポートしてもらうことを勧めました。ときどきしか自宅に帰って来ないゆえ、帰ってきたときぐらいは、と何でもやってあげたい気持ちはわかるのですが、長い目で見ると、祖母が自分で食べられなくなることを促進してしまうからです。些細なことですが、在宅における介護の難しさ、それは愛情ゆえの難しさでもあるのだと感じました。