人との関わりの中にしか喜びはない

現場での悩みを相談してくれる卒業生さんたちがいます。働き始めたばかりの右も左も分からないという悩み、人間関係の悩みなど。最終的には、それぞれの仕事や職場によって悩みもそれぞれであり、どう向き合っていくのかもそれぞれなのだと思います。そういった悩みを相談してくれることは大変ありがたいことですし(解決できるかは別にして)、これからも湘南ケアカレッジは気軽に相談できる学校でありたいと思います。つい最近、聞いた悩みとしては、今の仕事に慣れてきてしまったというものです。


仕事に慣れてきたのは良いことだけど、どうにかして楽をしようとしている自分もいる、という悩み。決められた時間の中で、やるべき仕事をやり、できるだけ早く(1分でも残業したくない!)帰る。そういう効率化を進めるためには、どうしても利用者とできるだけ関わらないようにして、面倒なことを減らそうという方向に気持ちが行ってしまうようになった。この仕事を始めたばかりの頃の自分とはまるで違ってきてしまったことに、薄々気づいてはいるけど、自分ではその流れを止められそうにないという内容でした。

 

そこまで自分の気持ちや仕事を客観的に見ていることがすごいと私は思いますし、それを素直に言葉にして相談できることも素晴らしいと思います。私だったら、そこまで気持ちをオープンに、自分をさらけ出せない気がしますから。この慣れという感情や状態は、おそらく仕事をしている誰にでも訪れるものであり、避けては通れないものです。慣れること自体は決して悪いことではありません。同じ仕事をより速く確実にできるようになりますし、その周りにあることにも注意を払える余裕もできます。しかし、「慣れ」の怖いところは、卒業生の言うように、楽をしようという方向に向かうときです。

 

私が子どもの教育の現場で働いていたときも、同じような「慣れ」の状況を経験したこともありますし、またそういう楽をしようとする状態に陥ってしまって抜け出せないスタッフもたくさん見てきました。介護の現場と教育の現場はかなり似ていて、人と関わることはエネルギーを要するため、できるだけ利用者や子どもたちと関わらないようにすれば楽だし効率的なのです。利用者や生徒との会話やコミュニケーションを減らし、やるべき事務処理に専念し、業務とされているものに多くの時間を費やすと一時的には楽になります。

 

そういった意味での「慣れ」を克服する方法としては、あえて人と接することです。人と関わることの中にしか仕事の喜びはありません。人と関わることは、ときに煩わしく、エネルギーを必要とし、精神的に傷つけられることもありますが、その反面、私たちの喜びも人との関わりの中にしかないのです。人と関わらないようにすると、一時的には楽になるのですが、次第に仕事がつまらなくなり、辛くなってきます。なぜなら、喜びを感じられないから。苦痛もないけど喜びもない、何もない状態。それこそが何よりも辛いのです。


慣れてしまったことに苦しんでいる人は、もう一度、今度は意識的に人と関わるようにしましょう。それでも上手くいかない場合は、たとえばそのための時間をつくったり、イベントを企画するなどして、人と関わることから逃げない仕組みを自らつくってみてはいかがでしょうか。心と心が通い合っているとき、私たちはこの上ない幸せを感じるものなのです。