今、ALSについて考えること。

昨年4月と7月の放送に引き続き、「ハートネットTV」にて、ヒロさんこと藤田正裕さんが登場しました。改めて紹介すると、藤田正裕さんは現在、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っており、全身の筋肉を動かすことができず、眼球を使ってコミュニケーションをする状況に置かれています。このままでは、瞼(まぶた)さえも開けられなくなり、誰とも意思疎通ができなくなるTLSTotally Locked-in State)、つまり完全な閉じ込め状態に陥ってしまう可能性もあります。私はなぜかこのALSという難病を身近に感じ、調べたり読んだりしてきましたが、今回の放送を見て改めて気づかされたことがありました。それは究極の選択をしなければならないとき、患者の70%が気管切開をあきらめて静かに亡くなるという事実でした。


筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう、通称ALS)とは、体を動かす運動ニューロン(神経系)が変性し、徐々に壊れてしまう疾患。運動ニューロンの変性によって筋肉への命令が伝わらなくなり、結果、筋力の低下を引き起こす。


運動ニューロンのみが変性するため、意識や五感は正常のままで、知能の働きも低下することはない。平均寿命35年。世界では120,000人、日本には9000人弱の患者がいる。


ALSの進行によって、手足の麻痺による運動障害、コミュニケーション障害、嚥下障害などの症状が起こり、最終的には呼吸障害を起こすため、延命のための人工呼吸器の装着が必要となる。極めて進行が速いが、現在、治癒のための有効な治療法は確立されていない。

(「END ALS」公式HPより)



究極の選択とは、ALSの症状の進行の過程にて、呼吸器系の筋肉が機能しなくなったときに突き付けられるものです。

 

1、  気管切開して、目も身体も全て動かず、コミュニケーションできない、身体に閉じ込められた状態になる可能性を受け入れ、10年も20年も「生きる」・「生かされる」。

2、  気管切開をせずに、ゆっくり皆、世の中にお別れを言って、最後の×××を経験して、静かに死ぬ。

 

私はかつて、この選択について真剣に考えてみたことがありました。「もし自分がALSを患い、究極の選択を迫られたとき、それでも自分は生きていけるか?」と、自分ごととして想像してみたのです。そのときの状況や心理状態によっては答えに迷うことが多く、そもそもそういった状況に追い込まれた自分を想像するまでに没入できることが稀でした。それでも、真剣に考えれば考えるほど、私の答えは2でした。

 

でも結局のところ、それは私が頭で考えた結果だからだろう、実際に選択を迫られたときには、それでも人は生きるという方を取るだろうとも思いました。だからこそ、70%の患者さんが気管切開をしないという選択をするという事実に驚かされたのです。表現は難しいのですが、私の身体感覚を伴わない想像などを遥かに一周して、それでも実際には死を選んでしまうぐらいに、このALSという病は恐ろしいものであるということです。

 

番組の最後の方で、ヒロさんが発した「ALSでも幸せに生きている方も多い、ということも伝えなければならないと思います。が、僕はそれだけではなく、悪夢の部分も叫ばないと終らないと思い、言葉がきつくなるところがあります」という主張には心から共感します。ヒロさんも言うように、この拷問のように人を殺していく病を少しでも早く倒さなければと思うのです。そのためには、私たちがALSにつてもっと知り、それを広く告げることで共有し、ひとりでも具体的な行動に移せる人が増えれば、治療や治験の可能性が広がります。これから私も、ささやかながらも貢献させていただきたいと思います。


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