湘南ケアカレッジでは、最終日にアンケートを皆さんに記入していただいています。湘南ケアカレッジの「介護職員初任者研修」を受けて感じたこと、思ったことなどの感想、そして各先生方についての評価やメッセージなど。このアンケートの結果を取りまとめて東京都に報告をしますので、研修の振り返りの一環としても、きちんと時間を取って真剣に書いていただきます。私たちはこのアンケートを読ませていただき、生徒さんたちの気持ちを感じ、喜び、嬉しく思い、またその裏にある想いに気づき、反省したりもします。私たちにとっては通信簿のようなものであり、これからの学校や授業をさらに良くしていこうと思える活力源になったりもします。
実はこのアンケートは、私が子どもの教育にたずさわっていたときに使っていたものをアレンジしたものです。先生として大切な「楽しさ」、「分かりやすさ」、「親切、丁寧さ」、「情熱」と「トータル」としての5項目を5段階で評価してもらいます。ひとつだけ湘南ケアカレッジなりのアレンジを加えたのは、アンケートに名前を書いてもらうことです。匿名のアンケートにはしないということ。そもそも、匿名にしても、教室ぐらいの規模の人数であれば、誰が書いたのか、すぐに分かってしまうものですが…。今までも何名かの生徒さんたちから、「匿名にしないのですか?」と聞かれました。
理由はいくつかあるのですが、ひとつは匿名の意見には意味や価値がないと思うからです。逆に言うと、自分の名前を挙げて書いてくれた意見は尊重されるべきだと思います。匿名でなければ書けないこともあると言われる方もいますが、もし私ならば、匿名でければ書けないようなことはそもそも書きませんし、実名だからこそ責任を持って、建設的な意見として出せると思います。匿名というのは、分かりやすくいうと2チャンネルの掲示板のようなところに行き着きますし、その人のいないところで陰口を叩くのと同じです。そこには悪意が満ちてしまいます。
私がかつて働いていた大手の介護スクールでは、匿名のアンケートがありました。そのときに気づいたのが、匿名のアンケートには確かに悪いことが多く書かれるのですが、そのほとんどは意味のないものでした。よく読むと、個人的な攻撃であり、言われた方は直すことができないことが多かったです。そうでなくても、論点や視点がずれていたり、個人的な解釈をして誤解しているものであったりしました。それらは研修の中で解決すべき問題であって、あとからアンケートでぶつけられても手遅れなのです。
そして何よりも、その意見や要望を真に受けてしまった先生方が傷ついてしまうことが最大の問題でした。真に受けてはいけないとここで書くのは憚られますが、全ての意見や要望を真に受けてはいけないのです。そうはいっても、それを読んだ先生方は、特に自分の名前が出ていたりすると(もしくは自分らしいことが書かれていたりすると)、匿名の意見であったとしても大いに傷つきます。それはアンケートの結果を気にしている一生懸命な先生ほどそうでした。
そうなると、いつの間にか、アンケートは自分たちの悪いところを指摘されるツールに変わります。先生たちは自分にとって都合の悪いことが書かれていないかと怯えるだけではなく、誰か他の先生について悪いことが書かれていないか探すようになります。あの先生はあんなこと書かれていると、仲間であった先生方までお互いにマイナスの視点で見合うようになるのです。これは多かれ少なかれ、匿名のアンケートを取っている学校では起こっていることです。アンケートという仕組みだけで、先生方を生かしも殺しもするという良い例だと思います。
長くなりましたが、私は世の中にある匿名のアンケートを全てやめるべきだと思います。大体のアンケートは、経営者が現場にいないことをよそに、お客さんたちに悪いことがあれば報告してねと監視させる意味で行っています。そういうの、もうやめませんか?アンケートを批難や陰口のツールから、感謝や意見を伝えるツールに変えていきませんか?悪いところをお客さんに指摘してもらうのではなく、自分たちで自分たちを見つめる。お互いを信頼し合って、改善していける。または質を保っていける。そんな仕事をしてみたいものです。