先週の日曜日、人身事故があった影響で、小田急線の本厚木から海老名間の電車の運行が一時ストップするという事態が発生しました。介護職員初任者研修には130時間という規定があり、湘南ケアカレッジは学則においても10分以上の遅刻は欠席扱いとするとしていますので、たとえ電車等の遅延が理由であっても、その日は欠席もしくは振り替え扱いとなってしまいます。せっかく来てくださったのに申し訳なく、そのときはタイミングが悪いなあなんて思ってしまうのですが、もしかしたら人命が失われてしまっているかもしれないのですね。私たちが介護や福祉について学んでいる一方、毎日どこかで人身事故が起こっているのも事実なのです。
自殺の是非を論ずるつもりもありませんし、原因や理由については多種多様であり、これという分かりやすい解決方法を提案できるわけでもありません。それでも、知っておかなければならないのは、自ら命を絶たなければならないような状況に追い込まれてしまう人々が日本では過去16年間で50万人、年間で3万人(最近では減少傾向にありますがおよそ2万5000人)ということ、そしてそれらを少しでも未然に防ごうとして活動している方々がいるということです。
私が日本における自殺の問題をはっきりと認識したのは、アイルランド人であるレネ・ダイグナン氏が3年かけて制作したドキュメンタリー映画「自殺者1万人を救う戦い」を観てからです。日本はこんなにも平和で生活しやすい国であるにもかかわらず、生きづらさを抱えている人々がたくさんいることをアイルランド人が見抜いたのです。彼は映画の中で、1万人の自殺を防いで命を救う方法として10の提案をしています。
1、 マスメディアで自殺について美化して宣伝しない
2、 マニュアル本の存在はサインと気づく
3、 保険金目当ての自殺には支払をしない
4、 自殺について話すことをタブー視しない
5、 長時間労働やパワハラを改める
6、 教育において他者との違いに寛容であることを教える
7、 ブルーライトのような外的環境の工夫を考える
8、 自殺未遂者が繰り返すのを防ぐため、たとえば精神保健福祉士を常駐させる。
9、 薬を処方するのではなく、時間を掛けてカウンセリングを行う
10、話をじっくり聞く。ただそれだけ。
最後の「話をじっくり聞く」は、レネ・ダイグナン氏がたどり着いた結論でもあります。私たちにできることは話を聞くことしかなく、しかし話を聞くことが最大の解決法になるのです。最近では若者の自殺率が高まっていますが、それでもまだ中高年の男性の自殺者が圧倒的に多いのは、話をじっくり聞いてもらえる相手がおらず、相談ができないことが最大の理由だと思うのです。話を聞くことで人を救うことができる、話をすることで自らを救うことができる。それは相手が家族や友人であれ、見知らぬ人であれ、男性や女性であれ、子どもや高齢者であれ、変わらず大切なことなのです。素晴らしいドキュメンタリー映画ですので、ぜひ観ていただきたいです。