「37.5℃の涙」

原作のモデルとなった病児保育フローレンスとその代表である駒崎弘樹さんの活動をかねてから知っていたので、テレビドラマ化もされたと聞き、ぜひとも読んでみたいと思っていました。とはいえ、少女漫画ということで手を出しづらかったのですが、先日教室に遊びに来てくれた卒業生さんの「面白いですよ」のひと言に背中を押され、買って読んでみました。さすがに「ヘルプマン」ほどの深さや感動はありませんが、単純にマンガとしても楽しめる内容ですし、働きながら小さな子どもを育てる親の苦労がきちんと描かれています。そしてやはり、保育と介護の世界はどこか根っこのところでつながっている、という想いを強くしました。どのあたりがと聞かれると、具体的な答えはまだないのですが、相手のことを観察し、自立(自律)をサポートしていくというところでしょうか。


最近、かつては保育士をやっていたけれど、介護の世界にシフトしたいという生徒さんが増えてきています。ひとつの理由として、これからの少子高齢化社会においては、子どもの人数は減りますが、高齢者の人数は増えていくということです。介護の世界では利用者が増え、サービスを提供する人もより必要になってくる、つまり仕事が増える。もうひとつは、年齢を重ねても長く働き続けることができるからです。反論もあるかもしれませんが、保育の現場は若いスタッフが中心であり、健康であれば70歳になっても働き続けることができる介護の現場とは職業寿命が大きく違いますね。そしてなによりも、保育と介護の世界はつながっているので、同じマインドを持った人材が移ってきやすいのです。

 

実は、今から10年ほど前、私が広島で仕事をしていたとき、育児ヘルパー養成講座という研修を立ち上げようと思っていました。ちょうど子どもが生まれようとしていた時期と重なって育児に興味が湧いていたこと、また当時から保育園や保育士不足が社会的な問題になっていたこともあり、介護の資格を持って仕事をしている人たちが育児ヘルパーとしても活躍できないかと考えたのでした。役所を回って制度等の情報を集め、保育の専門家の方々に会って話を聞いたりしているうちに、介護と保育はつながっているという確信を深めたものです。

 

でも、その当時は、育児ヘルパーという資格も仕事もなく、ファミリーサポートセンターが小規模で登録ボランティアを動かしている程度でしかありませんでした。仕事がなければ研修を行っても仕方がありませんし、結局のところ企画倒れになってしまいましたが、あのときはやらないという決断で正解だったと思います。最近、介護と保育の資格を一本化するという案が厚生労働省から提出され、(大いに誤解されているようですが)持って行き方次第ではとても良い考え方だと思います。同時に保育と介護を行うのではなく、保育と介護を一括りにするのでもなく、保育から介護、介護から保育の世界への人材の流動性を高めるということがポイントですね。

 

ちなみに、マンガのタイトルにある37.5℃は、それ以上の熱が出てしまうと子どもを保育園で預かってくれなくなる基準だそうです。働きながら子育てをしている親にとって、このラインを超えるかどうかでその日の世界が一変するほど、37.5℃という数字は大きな意味を持つのです。