認知症について学び、伝えることで

「認知症について学ぶことができて、本当に良かったです」と卒業生がおっしゃってくれました。義理のお母さまが認知症を患っていて、これまでは自分なりに受け入れてきたつもりですが、介護職員初任者研修で改めて学んだことで、どのように接するべきか良く分かったとのこと。そして、認知症について学んだことを、さらに旦那様や子どもたちにも伝えてくれているそうです。この話を聞いたとき、私はとても嬉しく思いました。自ら学び、実践し、それを他の人たちにも伝えていく。そうすることで、私たちの社会は少しずつ変わってゆくのです。

 

彼女はずっと介護や認知症について知りたい、学びたいと興味を持っていたそうです。小さいお子様がいらっしゃるので、すぐに介護の仕事がしたいということではなかったのですが、湘南ケアカレッジに通っていた友人の勧められたことがきっかけとなり、介護職員初任者研修を受けてくれることになりました。

 

それまでは、義理のお母さまが彼女のことだけではなく、自分の子どもである旦那様のことまでも忘れてしまうことが出てきて、とても心配していたそうです。さらにお財布を盗られたという盗られ妄想も頻繁にあり、どう対処すべきか悩んでもいました。もう年だから仕方ないと受け入れられるときもあったし、また逆に「私は盗っていません」と反論してしまうこともありました。しかし、強く主張してみても、状況は良くなるどころか、余計に悪くなったそうです。

 

そして今回、介護職員初任者研修で認知症に中核症状と周辺症状(BPSD)があることを知り、認知症にも様々なタイプや症状の現れ方があることを学んだことで、どのように接するべきか頭と心で理解することができたそうです。目の前の霧が晴れたというか、これまでも向かっている方向は間違っていなかったけど、ようやく行先が分かったという感覚でしょうか。今は認知症について理解している分、心穏やかに接することができ、お母さまとの関係もさらに良くなったそうです。

 

さらにその影響は、旦那様や子どもたちにも及びました。実は、これまでは旦那様も自分のお母さまに対して厳しい態度を取ってしまったり、子どもたちは正直ですから、「おばあちゃん、それさっきも聞いたよ!」と苛立ってしまうことも多々あったそうです。彼女が今回認知症について学び、「私、認知症について勉強してきたんだけど、こういう風に接してあげた方がいいみたいよ」と旦那様や子どもたちに伝えたところ、理解してくれ、実践してくれているようです。

 

 

認知症について、世間では騒がれることが多くなりましたが、私たちが思っているよりもそれがどういうものなのか知らない人の方が多いのが現状です。認知症という言葉やなんとなくのイメージは分かっていても、それがどういう病気や症状なのか、どう接するべきなのかについてはほとんど知られていません。「認知症サポーターキャラバン」などの取り組みはありますが、まだまだ物足りないです。私たちは認知症だけではなく、もっと介護や福祉について学ばなければならない時代に生きています。全ての人々が学ぶことができないとしても、ひとりでも多くの人々が介護職員初任者研修を受け、彼女のように自分の家族や周りの友人たちに伝えてくれる人が増えれば、誰もがより良く生きられる社会になるのではないかと思うのです。