「ここはすごいね。こんなに密度が濃いとは思わなかった。単なる介護の先生じゃあないから。どの先生からも、介護に対しての熱い気持ちが伝わってきた」と1月短期Bクラスの生徒さんがおっしゃってくださいました。彼が言いたかったのは、介護の知識や技術だけではなく、もっと大切なことを教えてもらったということだと思います。どの先生からも熱い気持ちが伝わってきたと知り、私はとても嬉しかったです。なぜなら、湘南ケアカレッジという学校を通し、介護職員初任者研修にて、私たちに伝えることができるのは、究極的には、気持ちやこころ、そして考え方だと思うからです。
もちろん、介護にたずさわるにあたっての基本的な知識や技術を習得してもらうことは大切です。介護職員初任者研修の15日間の研修を通して、体型的に学んでいただきますが、最終的には、それは単なる介護や福祉の知識や技術でしかありません。「○○(学校名)の卒業生はきちんと教えてもらっているから、いきなりでも仕事ができるよね、と言われるように教えたい」とは他の学校の先生方も言うところであり、その気持ちはよく分かります。
でも、実際のところは、わずか15日間の研修では、それほど知識・技術レベルに大きな差が出ることはなく(生徒さん個々のレベルや学校の教育内容レベルによって多少の差は生じますが)、初任者研修の修了者だからといって、いきなり何でも仕事ができるということはありえません。現場で仕事をしながら覚えていくことがほとんどでしょうし、その中で、「そういえばこれ習った気がする」とか「あのとき先生が言っていたことだ」と思い出してくれたら、それで良いのではないでしょうか。
それでは、基本的な知識や技術を習得してもらう過程において、私たちが何を伝えるべきかというと、介護や福祉に向き合うための気持ちやこころ、そして考え方です。とても抽象的なことですが、実はそれこそが、介護職員初任者研修の中で唯一伝えることができ、かつ卒業してからも長きにわたって生徒さんたちの心の中に残り、決して忘れられることなく生き続けるものだと思います。それが届いていることで、卒業生が介護の現場で楽しく、長く働くことができたり、周りの人々を幸せにできたりするのです。
卒業生さんたちが、介護の現場でやりがいや志を高くもって、長く働くことができ、周りの人々に良い影響を及ぼし、やがては社会や地域を少しずつでも変えていってくれることを湘南ケアカレッジは願います。そんな卒業生さんたちをひとりでも多く育てたいと思います。かつての松下村塾や適塾が、あとから見ると、生徒さんたちの中から多くの社会を変える人材を生み出したように。そのためには、今何ができるようになったということだけではなく、もっと大切なことを伝える必要があるのです。
これは余談ですが、松下村塾も適塾も日本に1つしかない小さな塾でした。松下村塾が全国にたくさんあったり、適塾が○○校として県内に複数あったりしたら、やっぱりおかしいですね(笑)。湘南ケアカレッジが成功したかどうかは、10年後、20年後、いやもっと先にならないと分からないということですね。壮大な夢を語っていると思われるかもしれませんが、未来に先回りして考えてみると、冒頭の生徒さんの言葉が私には貴重だと感じるのです。