「つながり」があること

介護の研修や授業の良し悪しを評価するポイントのひとつに、「つながり」があります。授業と授業の内容がつながっていること、そして先生同士がつながっていることです。それぞれの授業に一貫性がないといけませんし、あわよくばそこにひとつのストーリーがあると良いです。先生方の言っていることがバラバラでは生徒さんたちは混乱してしまい、先生方がお互いのことを知らない(もしくは仲が悪い)雰囲気は生徒さんたちにも伝わってしまいます(笑)。運よくも湘南ケアカレッジは「つながり」のある介護職員初任者研修をつくることができましたので、生徒さんたちの期待を裏切らないよう、実務者研修も同じく「つながり」のある授業を提供していきたいと思います。

 

そんなこと当たり前だと思われるかもしれませんが、意外にもつながりがある研修をつくるのは難しいのです。他の学校の(実務者)研修を受けたことのある卒業生に「どうでしたか?」と感想を聞くと、返ってくる多くの答えは、「先生たちの言っていることがバラバラで困った」です。私は大手のスクールで働いていた経験があるので、あながち卒業生さんたちの言っていることが間違っていないことが分かります。同じことだけどA講師とB講師の言っていることが違うように聞こえる、という話ではなく、実際にA講師とB講師は違う内容のことを言っているのです。

 

なぜ「つながり」のある研修をつくるのが難しいかというと、介護職員初任者研修であれば15日間、湘南ケアカレッジでも今年度から開催する実務者研修であれば7日間の研修の中で行われる授業の中に、たくさんの先生方が関わるからです。たとえば学校や塾であれば、基本的には国語の授業は国語の先生が、英語の授業は英語の先生が続けて教えますが、上記の介護の研修に関しては複数の先生が教えなければいけません。そこには、同じ先生の授業ばかりだと、考え方や見方が偏ってしまうからという明確な理由があります。偏りを防ぐために複数の先生方で授業をすることにより、今度は授業に一貫性がなくなってしまうという皮肉が生じるのです。

 

でも、本当のことを言うと、複数の先生方が教えるから一貫性がなくなるのではなく、先生方がお互いに何を教えているのか全く知らなかったり(興味がなかったり)、先生同士が面識や交流がなくてお互いのことをよく知らなかったり、そもそも自分の授業の前後で教えている先生が誰なのか知らないことが原因で「つながり」が失われてしまうのです。教室が複数あるような学校では、先生方もバラバラに教室に配属されますので、こういった問題は避けられません。もちろん、「つながり」のある研修をつくりたいと願う先生たちも中にはたくさんいるのですが、大手のスクール側にそういう方向性や想いがないので、「つながり」のある研修を実現するのは難しいのです。

 

 

幸いにして、湘南ケアカレッジは小さな学校ながらも大きなクラス設定で始めることができましたので、実技演習になると3名の先生方が皆さまをサポートすることになります。生徒さんたちにとってだけではなく、実は先生方にとっても良い話であることに後から気づきました。サポートに入ることで他の先生がどのような授業をしているのか知ることができ、自分がメインの授業にサポートで入ってもらうことで他の先生方に知ってもらうことができる。内容を知るだけではなく、お互いに切磋琢磨できる。それぞれの人となりを(もちろん良い面も良くない面も)知ることで、お互いの価値を知り、そして尊敬し尊重し合える。この3年間をかけて、そんな深い「つながり」が私たちの間に生まれている気がします。