どうすればできるのか?

「どうすればできるのか?」と考えることは大切です。実務者研修の医療的ケアの授業が終わり、心からそう思います。湘南ケアカレッジにとって、医療的ケアの授業は初めてであり、介護の授業と違って全くノウハウがない状態でのスタートになりましたので、何度もミーティングを重ね、「どうすればできるのか?」を話し合ってきました。より本質的な授業を提供し、生徒さんひとり1人を見ることができ、最後には誰もが自分ひとりでできるようになる。その目的に向けて、3人の先生方は、それぞれに意見を出し、互いの意見にも耳を傾け、自分の意見に固辞することなく、良い意見を取り入れながら、まっさらな視点で「どうすればできるのか?」を考えてくれました。そして、その成果が見事に現れた、湘南ケアカレッジの医療的ケアの授業になったと思います。

実は医療的ケアの授業には様々な制限があります。まず演習の回数が決められています。口腔・鼻腔・気管カニューレによる吸引を5回以上、胃ろう腸ろう、経鼻経管栄養を5回以上行うというもの。5回という数字にあまり意味はありませんが、つまりたくさん練習しましょうということです。もちろん、たくさん練習することが目的ではなく、実際に身体を使って医療的ケアの流れや手技、観察のポイント、注意するべき点などを体得することが目的です。ということは、ただ回数をこなすのではなく、重要なポイントを押さえながら、いつでも質問をすることができ、さらに生徒さん同士で高め合いながら集中して学ぶことができなければなりません。

 

そんな授業を可能にするために、まずは医療的ケア用の人形を12体購入することに決めました。これで最大36名の生徒さんたちでも、3人に1台の人形を使って演習してもらうことができます。正直、1体が数十万もする医療用品だけに懐は痛かったのですが、生徒さんたちに少しでも多く練習してもらうためには必要な投資だと判断しました。普通の学校では1教室に3~4体あれば良い方ですから、1教室に12体も医療的ケアの人形がある学校は、日本中のどこを探してもないと思います(笑)。生徒さん6名に人形1台の割合ですと、1人が演習をしているとき、もうひとりは評価、もうひとりは次の演習のために見て覚えるとしても、あとの3名は完全に手が空いて遊んでしまいます。そんな光景を他の学校の実務者研修で見てきましたので、できるだけ時間の無駄をなくすためには、人形の絶対数は必要だと考えました。

 

もちろん、物品だけ揃えれば良いというものではありません。適切な物品がなければ始まりませんが、そこからさらに求められるのは人(先生)とアイデアです。生徒さんに必要な知識を分かりやすく的確に伝えられる能力や知識、質問をしやすい親しみやすさ、生徒さんたちのモチベーションを上げることができるかかわり方などなど、看護師の先生方に問われる力はさまざまです。それらの全てを3人の先生方は持っていると思います。さらに医療的ケアの研修で伝えるべき本質は何かを突き詰めていくと、手順ではなく相手に対する思いやりや声掛け、先生は評価者ではなくファシリテーターとして関わる、生徒さん同士ではフィードバックではなくフィードフォワードの伝え方を取り入れるなど、従来のやり方ではない違ったアイデアが浮かんできました。

 

 

もし3人の先生方のうち1人でも、「できっこない」「無理」「ダメ」という妄想に憑りつかれてしまっていたら、このような素晴らしい授業はできなかったはずです。授業の終わりに記入していただくアンケートにも、先生方がひとり1人の生徒さんたちに全力で関わってくださったことに対する賛辞が多く書かれていました。こんなに楽しく、一生懸命に学べて、医療的ケアの本質も実技もしっかりと習得できる授業が生まれたのは、私たちにしかできない授業をしようと頑張ってくださった3人の先生方のおかげなのです。これから湘南ケアカレッジの医療的ケアの授業を受けるという方々は、ぜひ楽しみにしていてください!