多様性に学ぶ

8月短期クラスが無事に修了しました。毎年、夏休みの時期に行われることから、8月短期クラスには特に年齢の幅広い生徒さんたちが集まります。昨年の最年少は14歳、今年は16歳でした。10代から60代までの年齢層の生徒さんたちが、同じ目標を持って、一緒に授業を受けたということです。これだけ様々な年齢の方々が集まって、共に学ぶ研修は他にはなく、介護職員初任者研修の魅力です。そして、まさにそれこそが福祉の世界における多様性のひとつでもあるのです。教室だけではなく、これから福祉の世界で活躍する皆さまは、多様性を受け入れ、尊重し、超えていかなければならないのです。

年齢が違うということは、育ってきた時代が違うということ。私たちは自分が生きてきた時代のことしか、実際に観たり、聞いたり、リアルタイムで経験したりすることができません。過去の時代のことを知ろうとするのは大事ですが、その時代を生きた人と比べてしまうと、どうしてもあらゆる面で知らないことが多くなってしまいます。また今、同じ時代を生きているとしても、年齢が違うことで、見るものも、聞くことも、体験することも違ってくる。たとえば10代の子どもの今と50代の大人では感じ方や考え方が違って当然です。

 

私たちが介護の現場に出たとき、まずは自分とは年代がひと回りもふた周りも違う利用者さんたちと向き合わなければなりません。見てきたこと、聞いたこと、知っていること、経験したことから、価値観や倫理観まで、まるで異なる人々と言っても良いでしょう。さらに周りのスタッフにも、異なる世代の方々が(他の業種で働くよりも)たくさんいるはずです。そんなとき、介護職員初任者研修でいろいろな年代のクラスメイトたちと仲良くなれた経験が生きてくるはずです。

 

実は利用者さんたちにとっても、様々な年齢層のスタッフがいることは大切です。若い人たちと話すのが好きという利用者さんもいれば、年齢が近い人の方が話が合うという利用者さんもいます。また、同じ人であっても、自分の孫のようなスタッフと話したいときもあれば、自分に近い年齢のスタッフと語り合いたいときもあるでしょう。レクレーションなどは若いスタッフたちと一緒に遊ぶのが楽しいけど、日常的なことは年配のスタッフたちに支えてもらった方が落ち着くという人もいるはずです。若い人ばかりを採用するホームもありますが、どこかで歪みが生まれるのではないでしょうか。時と場合、状況によって様々な対応ができるためには、スタッフの年代の多様性が必要なのです。

 

 

もちろん、年齢だけではありません。性別や生まれた国を超えて、私たちは他者を受け入れて、尊重して、共に生きていかなければならないのです。自分とは異なる人やものごとを一方的に拒絶するのではなく、理解しようとする。完全には理解できないかもしれないけど、できるかぎり自分の価値観や考えを横に置いておいて、その違いを楽しむことで初めて私たちは多様性に学ぶことができるのです。福祉のこころというものがあるとすれば、そういうことだと思います。