現場の人たちを励ましたい

先日、自宅への帰り道で卒業生さんにばったりと会いました。普通に歩いているときも笑顔が溢れているような方で、遠目から見てもすぐに彼女だと分かりました。「おひさしぶりです」と声を掛けると、今の施設のことや先輩(ケアカレの卒業生)のことなど、堰(せき)を切ったようにたくさん教えてくれました。介護の仕事を楽しんでいることが伝わってきて安心しましたし、何よりも嬉しかったのは、「『実務者研修は母校に行きたいです』と上司にはっきりと伝えました」と言ってくれたことです。

 

最近は、実務者研修を自分の施設内で行うところが増えてきています。職員さんにとっては無料で受けることができますし、わざわざ別の場所に通う必要がないので気楽でもあります。施設にとっても、社内教育の一環として行うことができ、人材の囲い込みにもなります。私も勉強会や研修を行うことには賛成ですが、実務者研修までを施設内で行ってしまうことには少し疑問を抱きます。介護福祉士を目指すべき人たちのための研修を、社内で済ませてしまっても良いのでしょうか。

 

というのも、私自身、かつて勤めていた企業で社内教育や研修を担当していたからです。たとえば、コミュニケーションやマーケティングから、授業の展開の仕方、コーチング、文章の書き方まで、ない知識を絞り出しながら教えさせてもらいました。私以外にも社内のベテラン社員さんたちに声を掛け、講師を務めてもらったこともありましたし、社外の知り合いに研修を依頼したこともありました。そんな中で感じたのは、視野の狭さとある種の押しつけや誘導が生じてしまうということでした。

 

視野の狭さとは、もちろん私のそれではあるのですが、やはり同じ場所(生活圏)で働いている人たちの知識や技術、考え方、発想の範囲には限界があります。多様性がないと言うこともできます。それぞれは個性的かもしれませんが、全体的に見ると、同じような人たちが集まっているということです。その社内の人が、社内の人に提供できる研修には限界があるのです。

 

もうひとつ、こちらの方が怖いのですが、ある種の押しつけや誘導は避けられません。会社としてこういう方向に持っていきたいというゴールがあって、そこから逆算して内容を組み立てるので、どうしても社内のやり方や価値観を押し付けてしまうことになります。自分たちにとって都合の良いことは教え、不利になることは教えない。たとえ公平になろうとしても、どうしても無意識のうちに、研修を通して洗脳してしまうことになるのです。

 

 

このジレンマを解消するためには、外部の機関や第3者に任せてみることです。そして、自分たちのスタッフを信じて、成長を願うことです。私たちは、今の施設や事業所のやり方を決して否定したりはしません。何かを大きく変えることが難しいことも分かっています。ただ、もっと深く広く学びたいという生徒さんたちの気持ちには応えていきたいですし、何よりも、介護の現場で懸命に働いている人たちを励ましたい。実はそのことが、私たちが実務者研修を通して行いたいことであり、湘南ケアカレッジにしかできないことなのです。