実務者研修では、各授業の終わりにリアクションペーパーを書いてもらいます。アンケートや感想ではなく、授業ごとに学んだことや気づいたことを書いていただくリアクションペーパー。リアクションは反応という意味であり、先生が伝えたこと、または授業で体験したことに対し、自分は何を感じたのか、学んだことをどのように現場に使おうと考えたのかなど、具体的に記していただきます。実務者研修に来てくださっている生徒さんたちであれば、毎回の授業の中で(多かれ少なかれ)学びや気づきがあるはずですし、それを具体的に文章化してもらうことで、学びを明確にして定着させるという意図もあります。
このリアクションペーパーを読むと、それぞれの生徒さんたちの理解度から研修に臨む姿勢、現在の心境までが手に取るように伝わってきます。1日の研修で学んだことや気づいたことが具体的に書けるようであれば、その生徒さんは具体的な学びや気づきを得たということを意味し、その逆もまた然りということです。
これは学習だけではなく、仕事にも当てはまります。まずは気づけるかどうかという壁があり、その次に気づきを言語化(記述・記録)できるかという壁があります。気づき→言語化のサイクルを継続して回しつつ、その先には、他人に上手くそれを伝えることができるかという3つ目の壁もありますが、まずはひとつ目の壁から乗り越えていく必要があります。リアクションペーパーはその練習や意識づけになるはずです。
ひとつ目の壁とふたつ目の壁は密接につながっています。誰しもが研修を受けたり、仕事をしていれば、何らかの気づきはあるはずで、それを言語化(記述・記録)することではじめて、その気づきは本物の気づきになるのです。悲しいことに、言語化できない気づきは、いつの間にか霧を掴むように消えていってしまいます。それは結局のところ気づきがなかったのと同じ。そうならないためにも、私たちは日々の気づきを、何らかの形で言語化していかなければなりません。介護職員であれば介護記録なのかもしれませんし、主婦であれば日記なのかもしれません。私はこのブログを書くことで、気づきを言語化しています(笑)。
そして、逆説的ですが、言語化の習慣をつけることで、気づけるようになるのです。言語化するという意識があると、見ようとするからです。毎日の何気ない日常にも新しい発見があり、つまらないと思っていた仕事の中にも新しい気づきが生まれる。たとえば作家があれほどに人の表情や風景を見事に描写できるのは、彼ら彼女らは見ているからなんですね。意識を研ぎ澄ませ、見て、感じて、気づいているのです。作家のように美しく言語化する必要はありませんが、気づきを言語化できる人とそうでない人との仕事や人生の間には、長い目で見ると、天と地ほどの違いが生まれるはずです。