しんではいかん

9月10日から16日は自殺予防週間です。福祉の仕事にたずさわる者として知っておいてもらいたいということで、介護職員初任者研修の中でも望月先生や佐々木先生らがお話ししています。平成28年の自殺者数は2万1897人と、平成15年の3万4427人をピークに最近は減少傾向にありますが、それでも年間で2万人の方々が自ら命を絶っている現状からは目をそらしてはいけません。ちなみに、世界の国々の中で自殺が最も少ないメキシコは実は排泄量が多いらしく、良く食べて良く出すことが心の健康にもつながってくるのではとのこと。またゲートキーパーの話など、この機会に私たちが自殺予防について知っておくべきことはたくさんありますね。

ゲートキーパーとは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことで、言わば「命の門番」とも位置付けられる人のこと。 自殺対策では、悩んでいる人に寄り添い、関わりを通して「孤立・孤独」を防ぎ、支援することが重要です(Wikipediaより)。まさにその通りで、自殺の名所を見守りのボランティアとして歩いて声を掛けただけで、そこでの自殺者が激減したという話もあるように、ちょっとした仕組みや人間がいることで、人の命を救うことができるのです。もちろんその逆も然りで、ほんのわずかなきっかけで人は死を選んでしまうこともあるということです。

 

せっかくいただいた命を自ら断ち切ってしまう、有を無に帰してしまうのには、それぞれにそれぞれの理由があるはずです。年代によっても、男女の違いによっても、失業率によっても、自殺の原因はさまざまです。その正当性は自分以外の誰にも知りえませんし、私たちには生きる権利もあれば死ぬ権利もあるはずです。それでも生きていてこそと思うのは、やはり生きることを選んだ者の論理なのでしょうか。私は自分自身に対して(他人に対してではありません)、なぜ自殺をしてはいけないかという理由を説明するとき、明確な答えがあります。

 

「ひとつ やくそく」(糸井重里)

おやより さきに しんでは いかん
おやより さきに しんでは いかん
 
ほかには なんにも いらないけれど
それだけ ひとつ やくそくだ
 
おやより さきに しんではいかん

 

 

この詩は、なぜ自殺をしてはいけないかという問いに対して、あらゆる著名人が答えていた中で、最もしっくりと来たものでした。たとえどんなことがあったとしても、自ら命を絶って、親に先立つことは自分勝手であり、親不孝だということです。私たち誰もがいずれ死を迎えますが、親より先に死んではいかんのです。そのことは、自分が親になってみてようやく分かりました。

 

もうどこにも逃げ場がなく、詰んでしまったと思っても、もっともっと考えて行動すれば絶対に道は残されているはずです。生きていれば、時間が解決することもある。死んだと思っても助かっていることもある。もし自分で考えても行き詰ってしまうなら、誰かに相談してみるのもいい。話を聞くことぐらいはできるし、自分には見えなかった視点があるかもしれないし、もしかするとあなたには思いつかなかった方法を提案できるかもしれません。そして何よりも大事なのは、自分は絶対に負けないと言い聞かせることです。私の子どもにはそう伝えたいと思います。