年が明けてからポストを開けると、卒業生さんからの年賀状やお手紙が届いていました。介護の仕事を続けてようやく3年目になったこと、修了証明書と一緒に届いたキーホルダーに感激したこと、介護の仕事が決まって介護福祉士を目指したいことなど、それぞれの卒業生さんたちが今どうしているかが伝わってきます。また、湘南ケアカレッジの教室に直接顔を出してくれる卒業生さんもいます。今の介護の仕事が楽しくて充実している報告であったり、町田を散歩しているついでに寄ってくれたり。久しぶりに見るお顔は、介護職員初任者研修に通っていた頃とはまた違ったそれになっていたように感じました。卒業した後もこうして思い出してもらえることは、私たちにとっての喜びであり、ご褒美なのかもしれません。
先日は、昨年の介護福祉士試験に合格した卒業生さんが、遅ればせながら報告に来てくれました。彼女は昨年1年の間に、湘南ケアカレッジで介護職員初任者研修を受け、その勢いで実務者研修を受け、さらに介護福祉士筆記試験対策講座で学んでくれました。それまでに3年近くの介護業務経験があったので、これだけの詰め込みが可能になったわけです。ランチを食べながら話をすると、「介護福祉士に合格したことで、少し自信がつきました」と彼女は嬉しそうな表情をしていました。「4月になると新卒が入ってくるので、上手く教えることができるか心配です」と心配しつつも、「今働いているところでもう少し頑張ってみたいと思います」と前向きな気持ちをポツポツと話してくれました。
そして、しばらくの沈黙のあと、
「村山さんに言われたように、書く文字も大きくなったんですよ。友だちにも、これ私が書いたの?って言われるぐらい」
と言ってくれたとき、心の底から良かったと私は思いました。というのも、私には彼女に対して後ろめたい気持ちがあったからです。
介護福祉士筆記試験対策講座において、ノートを提出してもらいチェックしていたところ、彼女の書く文字は読めるか読めないかギリギリの小ささで、それは彼女の自信のなさの表れなのではないかと私は考えました。そのような子どもたちをこれまでにたくさん見て来たからです。発想の転換として、文字を大きく書くことで少しずつ自信を回復していったケースもあり、思い切って「もう少し字を大きく書いた方が、気持ちも大きくなるよ」と彼女に提案してみたのです。その日を境にして、彼女はケアカレに来なくなってしまいました。
余計なことを言ってしまったなと私は反省しました。大人である彼女にとっては大きなお世話であり、文字の大きさについてとやかく言われる筋合いはないのです。もっと自信を持っていいんだよと思い伝えたことであっても、彼女を傷つけてしまったかもしれません。誰に対して、何をどのタイミングで、どのような言葉で伝えるかは本当に難しいことです。言わないと伝わらないこともあるし、言ってしまったかりに不愉快に思われてしまうこともあります。今回は失敗してしまったなと、ずっと心に引っ掛かっていただけに、1年越しに彼女の言葉を聞けて、胸のつかえが取れた気がしたのです。
彼女は大きく変わったのです。介護福祉士の試験に合格し、自信を持つことができたのです。そして、友だちに驚かれるぐらいに、書く文字も大きくなった。そして、「今日はケアカレに行かなきゃと思ったんですよね」と言って、こうしてケアカレにひとりで顔を出せるようになったのが、彼女が変わった何よりの証拠です。1年前の彼女であれば、ひとりでケアカレに挨拶に来るなんて考えられません。最後に「私、ケアカレに通って良かったと思っています」と打ち明けてくれたとき、私もこれからもっと頑張って、湘南ケアカレッジを良い学校にしていこうと思いました。