もう1度頑張ってみよう

「介護の仕事をやめようと思っていたけれど、実務者研修を受けて、もう1度頑張ってみようと思えました」と言ってくれた卒業生さんがいました。彼女は1期生、つまり湘南ケアカレッジの介護職員初任者研修の初めてのクラスの卒業生です。介護職員初任者研修の途中でも、「他の学校もこのような研修なのですか?」と尋ねてくれて(最初はネガティブな意味だと思っていました笑)、嬉しかったことを覚えています。彼女は介護職員初任者研修を修了後、施設で働き始め、紆余曲折がありながらも3年間介護の仕事を続け、介護福祉士を取るために実務者研修に戻ってきてくれました。

 

実務者研修を受講しているときは、まさかやめたいと思っているとは露知らず。介護職員初任者研修と同じように、真面目に取り組んでくれて、楽しく授業を受けている姿が見られました。最後の最後に本音を語ってくれて、驚かされつつも、外から見た感じと本人の内面は違うものだなあと痛感したのでした。彼女の仕事ぶりを知っている人から教えてもらったのですが、彼女はとても優しい性格で、利用者さんに対して寄り添ってあげたいという気持ちが強く、誰から見ても理想的な介護職員だそうです。しかし彼女は、自分は介護には向いていないと感じてしまうのです。外から見ると合っている、本人は合っていないと思っている、このギャップはどうしたものでしょうか。

 

ここからは私の推測ですが、おそらく彼女が行っている介護は理想的なものなのだと思います。利用者さんのために何ができるのかを考え、できるだけ利用者さんの願いを叶えてあげたいと行動する。3年間働いてきても、介護のあるべき姿を見失ってはいないということです。ところが、現場では違った考えや行動が優先されてしまいます。効率やスピードが重視されてしまい、彼女の優しさや丁寧さはむしろ足かせになってしまう。そうなると、彼女は自分は正しいとは思うタイプではないため、自分は介護の仕事に向いていないと感じてしまうのは当然です。ほんとうは介護に合っている人材が、自分は介護に向いていないと感じてしまう。これは介護の現場における由々しき問題のひとつだと思います。

 

どうすれば良いのかと問われると、答えはありません。ここ数年は介護の現場の人材不足はますます進行しており、それに起因する現場の疲弊は目を覆いたくなるほどです。とても介護ができるような状況にない現場がほとんど、と言っても過言ではありません。それでも問題を解決することはできずとも、あるべき姿を見失わないことはできるのではないでしょうか。もう1度頑張ってみようと言ってくれた卒業生さんは、介護の現場で3年間働いている間に、理想やあるべき姿を見失いかけていたのだと思います。そして、ケアカレの実務者研修に来て学んでいくうちに、理想やあるべき姿を取り戻したのです。これで良かった、間違ってはいなかったのだと思えたのです。

 

 

私たちにできることは、それぐらいのことでしかありません。あるべき姿をお伝えするために人と関わっていくことが教育であり、初心に返ってもらうことも教育です。そのためには私たちは常に高い理想を掲げなければいけませんし、そこからブレてもいけません。今、介護の仕事をしていて、自分には合っていないと感じている人にこそ、湘南ケアカレッジの実務者研修を受けてもらいたいと思います。