同行援護従業者養成研修の千種先生から良かったと聞いて、映画「5パーセントの奇跡~嘘から始まる素敵な人生~」を観に行ってきました。気がつくと上映されているのは、田端にある全20席ほどのミニミニシアターのみ。それでも観てみたいと思ったのは、予告編が面白かったことに加え、視覚障害者という題材はドイツ映画ではどのように描かれるのか興味があったからです。映画の内容は期待以上で、視覚障害をテーマとした「光」や「もうろうを生きる」とはまた違ったポップなタッチで、最初から最後まで飽きさせることがありませんでした。観終ったあと、明るい気持ちになれる映画です。
主人公のサリーは、先天性の病気によって95%の視覚を失ってしまいます。残された5%の視覚を頼りに普通学校を優秀な成績で卒業したのち、5つ☆ホテルで働きたいという昔からの夢をあきらめることなく、目が見えないことを隠して採用面接を受けることにします。それを嘘というべきか、挑戦というべきか分かりません。障害があるからあきらめるのではなく、どうしたらできるかというスピリットを前面に押し出して生きる姿に、何らかの障害に立ち向かおうとしている人たちは勇気をもらえるはずです。
この映画で特徴的だったシーンは、実際に視覚が5%しかない当事者から見た世界が映像で表現されているところです。全く光が見えない全盲の世界ではなく、ほとんど見えない弱視の世界もまた違った恐怖感を伴いました。少し見えると、もっと見ようという感覚に陥って、見えないことがストレスになりそうです。
ちなみに、同行援護従業者養成研修の中でも、様々なメガネを付けてもらって白濁や視野狭窄の体験をしてもらいます。当事者は一瞬ではなく、ずっとそうなのですから、体験で終らないためにも、私たちには想像力が求められているのです。
「幸せになるための道なんてない。道それ自体が幸せなのだ」というブッダの言葉が映画の中で紹介されていて、とても印象に残りました。つい私たちはゴールだけを見て、いつまでも辿り着かない幸せを手に入れようとあくせくしてしまいますが、その道を歩むこと自体が幸せなのですね。チャレンジしたからこそ道を楽しめるのでしょうし、かといって結果だけを求めても幸せではない。高い目標や夢に向かって挑戦することと、その過程を楽しむことのバランス感覚が大切なのです。ラストシーンにて、「僕はひとりでは生きられないんです」と言えた主人公は、ついに幸せを手にしたのだと思いました。