描きたい、が止まらない。

ケアカレナイトのネタにならないかとも思い、かねてより興味のあった障害者アートやアール・ブリュットについても学びたく、映画館シネマチュプキ・タバタで開催された「絵を描くワークショップ」に参加してきました。イベントの大まかな内容としては、障害者アートや絵と表現についてのお話しがあり、その後、とにかく絵を描いてみようということです。まさにケアカレナイトでこのようなことができたら面白いなと想像していた内容に近く、ぜひ先立って学ばせてもらおうと思ったのです。大きな白い紙に絵を描くなんて、おそらく小学生以来の体験でしたが、意外にも戸惑いは少なく、描き始めると没頭してしまう自分がいることに気がつきました。そして、何かに没頭することで得られる心の解放があることを知ったのでした。

ご存じない方のために説明しておくと、アール・ブリュットとはアウトサイダー・アートのことで、正規の伝統的な美術教育を受けていない人が制作したアート作品のこと。「生の芸術」とも呼ばれています。アウトサイダーという響きが良くないため、アール・ブリュットを使うことが増えてきているようですが、個人的にはアウトサイダー・アートという言葉も好きですね。正規の教育を受けていないからこそ自由な表現ができるということです。他の学問やスポーツ、ビジネスなどに比べても、型にはまらないことに価値があるアートだからこそ、アール・ブリュットが今注目されてきつつあるのだと思います。

 

 

前置きはこのあたりにして、絵を描くワークショップでは、大きな1枚の白い紙を渡されて、好きな動物の写真を選んで、紙一面に描きましょうというシンプルな説明のあとスタートしました。利き手とは違う手で描く、余白を残さない、動物の色を決めつけないというルールです。私はホッキョクグマの写真を手に取りました。ホッキョクグマを白くする必要はないのですが、私は逆にホッキョクグマの白さを際立たせたいと思い、持参した白いクレヨンを左手に握りながら描き始めました。

輪郭を描き、つぶらな瞳と可愛らしさが集約されている口と鼻は黒のクレヨンを使いました。背景は緑に塗りつぶし、ここでやめておけば良かったのかもしれませんが、ホッキョクグマを白だけに塗った罪悪感もあり、たぎる血潮が身体の内側からにじみ出てきている様子を表現しようとオレンジを入れました。タイトルは「燃える心」。

各自が描き終えた頃合いを見計らって、講師による品評会が行われました。周りの参加者たちの絵を見渡すと、上手なものばかりで、とても私と同じ時間で描かれたとは思えませんでした。参加者の中には、小さな子どもから視覚障害のある方、ダウン症の子もいて、それぞれがそれぞれの表現で目を引く作品を描いていたことが驚きでした。そこにはほとんど優劣はなく、講師の講評も参加者からの感想もポジティブなものばかりで、相田みつをさんではありませんが、みんな違ってみんないいという世界がありました。

何よりも自分で描き上げた達成感を誰もが抱いて、誇らしげでした。誰にとっても絵を描くことや何かを作るために没頭することが、与えられた枠の中から自分を解放することにつながるのだと、身をもって体験した瞬間でした。その後、映画「描きたい、が止まらない」を観て、生きることとアートの密接な関係について考えつつ、帰途に就きました。

ちなみに、こちらは映画「描きたい、が止まらない」に出演されている古久保さんの作品です。すごく細かい!