尊敬と感謝の気持ちを忘れない

先日の同行援護従業者養成研修には、介護職員初任者研修をちょうど6年前の2013年に卒業したIさんが来てくれました。久しぶりにお会いしたのですが、開口一番、「介護福祉士になりましたよ!」と報告してくれました。彼女は卒業してからすぐに有料ホームで働き始め、そのままずっと同じ施設で働き、一昨年、介護福祉士になったそうです。ケアカレに来たときは、(当然のことながら)介護については何も知らない、明るくてノリの良い女性でしたが、今や「介護は奥が深いですね」と深遠な言葉を発するほどに成長されました。ケアカレを卒業してから介護の仕事を続け、介護福祉士まで取り、新しい領域となる視覚障害者の支援を学びに来てくれたのは嬉しい限りです。

 

ところが、「当時の(介護職員初任者研修の)クラスメイトは皆、介護の仕事を辞めてしまいましたよ」と寂しそうに教えてくれました。LINEでつながっているクラスメイトたちの中で、彼女以外の全員が、6年経った今、介護の仕事から離れてしまっているということです。一度も介護の仕事をしなかったのではなく、一旦は介護の仕事をやってみたにもかかわらず続かなかった、別の仕事に移ってしまった。20名のクラスでしたので、その中でLINEに登録していたおよそ10名~15名のうちで1人しか5年続かなかった計算になります。

 

これはかなり由々しき事態なのではないかと思う一方、それが現実なのかもしれないと感じます。どれだけ学校として介護の世界の素晴らしさを伝えても、介護の現場に出てしまうと現実の壁にぶち当たって、理想は敗れてしまう。どれだけ多くの卒業生さんを育てても、まるでザルから抜け落ちるようにして、介護の仕事を辞めてしまうということです。このままでは、介護現場の人手不足はますます進んでしまいます。

 

お給料の低さや慢性的な人手不足による忙しさ、周りのスタッフとの人間関係など、一旦介護の仕事に就いた人が辞めてしまう理由は様々で、人それぞれなのだと思います。しかし、はっきりと言えることは、現場で最前線に立つ仕事は大変だということです。これは他のどの業種でも同じことですが、つまり対人援助職(接客業とは少し異なる)の肉体的、精神的な負担は私たちが想像する以上に大きいです。わずかな期間であれば続けられても、長く続けるためには、それだけのモチベーションや息抜き、目的や目標がなければならないのです。

 

そして何よりも、最前線で働く人たちに対するリスペクトが必要だと私は思います。現場から退いて、一歩外から介護に関わっている人たちも、大事な家族を預けている人たちも、現場で働く人たちに対するリスペクトを忘れてはいけません。できていないことはたくさんあると思いますが、まずは最前線で働く人たちに対して感謝と敬意を示していくことが大切なのではないかと思います。

 

それは私が塾の先生として、子どもたちと直接向き合ってきた経験からも言えることです。現場に放り込まれて、直接子どもたちと関わるのはエネルギーが要ります。気配りや心遣いも必要ですし、伝えたいことを上手く伝えるためには頭も使わなければいけません。我慢したり、ぐっとこらえたりする忍耐力も問われます。ありとあらゆる力を総動員して、現場の人たちは生徒さんや利用者に向き合っているのです。

 

 

だからこそ、私は先生方に対する尊敬と感謝の気持ちは忘れたことがありませんし、私たちは現場で働く人たちに対する尊敬と感謝の気持ちを持って接していきたいですよね。自分にはできないことをやってくれている人に対して、尊敬と感謝の気持ちを忘れない。それは長い目で見て、自分たちの住む世界をよりよくすることにつながっていくと私は信じています。