ICFの視点から

実務者研修の4月木曜日クラスが修了しました。緊急事態宣言が延長される中でのスタートとなり、最初は不安な気持ちを抱えながら参加してくださった生徒さんもいたと思いますが、皆さん最後まで頑張って通い切ってくださいました。年齢も幅広く、ケアカレの卒業生さんを含め、なかなか個性的なメンバーのクラスでしたが、最後はとても仲良くなって、(あくまで比喩として)肩を組みながら卒業されていきました。最後の授業の際にいただいたメッセージボードは、なんとICFの図になっていて、さすが実務者研修の修了生らしい発想だと感心しました。クッキーからお手製のはがきまでいただき、ありがとうございます。

 

実務者研修では介護過程について学んでいただきます。介護過程は知れば知るほど、勉強すればするほど深くて、難しくなっていくのですが、その中にICF(国際生活機能分類)があります。ICFとはものすごく簡単に言うと、「その人のできないところばかりを見るのではなく、できることにフォーカスし、どうやったらさらに良くなる(できるようになる)のか」という介護者が持つべき視点のことです。私たち介護者や支援者は、高齢の方や障害を持つ方を前にすると、どうしてもできないことに目が行ってしまいます。あれもできない、これもできないとなり、気がつくと何もかもやってあげるという考え方に陥ってしまうのです。それはある意味において、自然なことなのかもしれません。

 

意識しなければ、私たちはそのような視点で世界を見てしまう動物である以上、意識付けというか、思考の仕組みが必要になってきます。放っておくと、私たちは他人のできないことばかりを探してしまうので、あえてICFというというある種の矯正ツールを用いることによって、視点の転換を行うことができるのです。これは湘南ケアカレッジでもテーマとしている教え方のサイクルと、考え方は似ていますね。まずはできていることを褒める・認めるところから始め、その後にできていないところを伝え、やってみせて、やってもらって、再度、褒め・認めというプロセスがあってこそ、本当の意味で相手に伝わるということです。このサイクルを意識して回すためには、まずは相手のできることを見なければならず、仕組みとして生徒さんの良いところを見つけられるということです。

 

 

実は、他者に対する見方というものは、自分に対する見方の鏡のような関係にあり、相手のできないこと(できていないこと)ばかりを見ていると、いつの間にか、自分に対しても同じようにできないこと(できていないこと)を見るようになってしまいます。稀に他者に対する視点と自分に対するそれが全く異なる人もいますが、ごく稀です(人間はそんなに器用ではないので)。ということは、ICF的な視点で他者を見ることができると、自分に対してもそうすることができ、自分の可能性も広げることができるということですね。湘南ケアカレッジの実務者研修を受けた卒業生さんたちには、ぜひICFの視点で世界を見て、自分の人生をも豊かに育てていってもらいたいと願います。