それぞれの命

8月短期クラスが無事に修了しました。学生さんも多く参加してくれて、幅広い年齢層と性別の夏休みらしいクラスになりました。生徒さんの背景にこれだけの多様性があっても、いやあるからこそ、誰もがフラットに接し、クラス自体もひとつになれたのだと思います。介護職員初任者研修は介護の現場の縮図でもあるので、クラスメイトとの人間関係を楽しむことができたなら、実際に働き始めたときも上手くいくのではないでしょうか。もちろん、仕事となると組織の力学や上下関係が労働者を追い込んでしまうことは多々ありますが、本質的には、介護の仕事をしようと思う方々は良い人ばかりです。一人ひとりと話してみると、なおさらそう思います。

 

音楽が好きでそれで食べていきたいと考えつつ、介護の仕事もしている生徒さんがいました。以前、働いていた介護の現場で、気の合ったおばあちゃんがいたそうです。施設スタッフの誰よりもたくさん話しをしたのですが、おばあちゃんは亡くなってしまい、彼に手紙を残してくれたそうです。その手紙には、音楽をあきらめないで続けるようにと記されていたのです。その手紙を読んで、彼はあきらめかけていた夢をあきらめないことにしました。私たちは介護をする側の存在だけではなく、ひとりの人間として背中を押してもらうこともあるのです。

 

ケアカレで働きたいと言ってくれた生徒さんもいました。ケアカレに通ってみて、学校の雰囲気を知ってからそう言ってもらえるのは嬉しい限りです。こんな素敵な先生方と一緒に働いてみたいと思ってくれたのだと思います。しかし、とても優秀な方だったので残念でしたが、ケアカレは小さな学校ということもあり、お願いできる仕事が今はないのです。教室を拡大したりすれば、先生も事務スタッフも必要になってくるのですが、今のところ(開校以来ずっとそうですが)小さいままでいたいと考えています。大きくなってしまうとケアカレらしさはなくなって、ケアカレで働きたいと言ってもらえなくなるかもしれませんし、小さいままだとお願いできる仕事がないというジレンマですね(笑)。

 

大学生を相手に演劇を教えているという生徒さんもいました。彼は演劇をずっとやってきて、今は教える立場にいるのですが、このコロナ騒動の影響を多分に受けているのが演劇です。アートやエンターテイメントは不要不急のものとみなされ、少しでも危険が冒される可能性があるのであれば自粛を強いられてきました。橘川先生の授業が終わったあと、彼がぐるんとびーのラーメンの話を投げかけていて、僕も考えを述べました。そして、彼の意見も聞いてみると、まさに同意できるものでした。

 

自分の身に置き換えてみたら、何が大切かは分かるはずです。普通に考えたら分かることなのに、今の状況は明らかにおかしくないですかね。皆、命を守りたいのではなく、自分たちの何かを守りたいだけなのでは。ラーメンを食べるも食べないも、最終的に本人が決めれば良い話なのです。私たちは本人の意志を最大限に尊重し、できることはサポートし、何かあったら対応するだけで良いのです。それをラーメンを食べることを禁止し、食べられないように部屋に監禁し、口には猿ぐつわを付けさせるみたいなことをする権利は誰にもないはずです。そろそろ私たちは、命を守るだけではなく(本当に守れているのか大いに疑問ですが)、限りある命をどう使うのか、ということをよく考えなければならないのではないでしょうか。特に大人たちは。

お土産までいただいてしまいました。卒業後は気を遣わず、手ぶらで立ち寄ってくださいね!