ポスト介護福祉士

「介護福祉士を取ったので、新しい環境を求めて、職場を変えようと思っています」という報告を受けることが多くなってきました。湘南ケアカレッジは今年で10年目を迎えますので、介護職員初任者研修を受けて現場で働き、実務者研修を経て介護福祉士に合格した卒業生さんたちが、続々と介護の世界におけるキャリアの転機を迎えているということです。先日ふらりと教室に来てくれたFさんもそのひとりです。彼は4年前に初任者研修を修了し、その後、特別養護老人ホームで働き、昨年、介護福祉士になりました。介護福祉士になってみたものの、(決して悪い意味ではないのですが)日々の仕事内容は何も変わらないと話してくれました。違うフロアに異動になっても、毎日やっていることは同じですとのこと。多かれ少なかれ、介護の仕事を始めて3、4年目に差し掛かり、彼のように感じる人は多いのではないでしょうか。

 

「3日、3か月、3年」とよく言われるように、どの仕事でも辞めたくなる周期やタイミングは同じです。3日は明らかに自分の想像していた仕事内容や職場と違いすぎて、明らかに続けていくのは無理と自分で分かる場合です。3か月は少し続けてみたものの、日々、違和感を抱きながら働いて、ついに我慢の限界を感じて、仕事や周りの環境に慣れる前に辞めることを決断した場合です。そして、3年は仕事は自分に合っているけれど、今の仕事に慣れてしまい、新鮮さや刺激が失われて、飽きが来てしまった場合です。3日と3か月は、仕事自体を違うものに変えた方が良いと思いますが、3年は環境やスタイルを変えることでひとまず解決することができるはずです。

 

介護福祉士になる頃はちょうど3年の周期に当たることが多く、国家資格を取得したタイミングと伴って、新しい環境を求める人が多いのは当然の話ですね。それは決して悪いことではないと思います。横移動が難しい他の業種と違って、介護の世界は同じ仕事で他の施設や事業所に転職することが容易です。特に介護福祉士を持っていれば、より選択の幅は広がるでしょうし、今よりも良い条件での転職も可能です。新しい環境に身を置いて再出発してみる、新しいチャレンジをしてみるにはグッドタイミングですね。

 

私が彼に話したのは、いろいろな道があるということです。同じ高齢者介護であってもグループホームなどの違うサービスを提供している施設に行くこともできれば、畑違いの障害者支援の分野に行って新しい経験と学びを得ることもできます。5年後にケアマネを目指すのであれば、訪問介護の事業所で働いて在宅サービスについて学んでおくことも大切です。時間的にも経済的にもあまり現実的ではありませんが、社会福祉士や看護師を目指すこともできます。もし自分はこういう介護をしてみたいという想いがあるのであれば、独立して訪問介護やデイサービスなどと立ち上げることも可能です。その前に、どこかの事業所やデイサービスで修行をさせてもらうことも良いでしょう。行き詰ったように思えても、介護の世界は意外と多様な道が広がっているということです。

 

 

「気持ちが楽になりました」と言って、彼は帰っていきました。