
先日、町田のデパートを歩いていると、「村山さん!」と声を掛けられました。ふと見ると、もう10年近く前の卒業生Aさんでした。初任者研修と実務者研修のどちらも来てくれていますし、その後、知り合いを紹介してくださったり、さらにはちょうど今月(9月)からスタートした短期クラスにもひとり、Aさんのご友人が参加してくださっている絶好のタイミングでの出会いでした。Aさんはめったに町田に来ることはないのに、現実にこうしてバッタリと出会ってしまうのですから、縁とは面白いものだと感じました。私たちはこうした縁やつながり、出会いに恵まれて生きているのかもしれません。
Aさんと話している中で、友人が介護の勉強をしようと、いくつかの学校を見学に行ったときの感想を聞かせてもらいました。湘南ケアカレッジについては、「受講料が一番高くて、古いイメージだったけど、内容が良さそうだったのでここにしようと思っている」と言っていたそうです。それを聞いたAさんは「そこだよ、そこが私の母校だよ」と返してくれて、無事に友人はケアカレに来ることになりました。来てくれて良かったのですが、僕の中でひとつ引っ掛かった点があります。それは「古いイメージ」という言葉でした。
受講料に関しては、2013年に湘南ケアカレッジが開校したときは最も安くて心配されたのですが、今では1番高いと言われるようになりました。時代の移り変わりには感慨深いものがあります。この10年間で、ほとんどの学校は教育ではなく有料職業紹介によって利益を出すモデルに様変わりし、受講料は無料でもいいから仕事の紹介が成立すればよいと考えるようになりました。
湘南ケアカレッジは「世界観が変わる福祉教育を」届けたい学校ですから、そうした職業紹介偏重(教育軽視)の流れに抗おうとして、教育サービスに対する対価として受講料はいただきたいと頑張ってきました。そして、気がつくと受講料が最も高い学校になっていたのです。ケアカレが高くなったのではなく、他校が安くなった(教育ではない部分で利益を出すようになった)ということです。良し悪しは別にして、この流れは止められません。
それよりも、古いイメージと言われたのは初めてでした。他の大手介護スクールと比べて、湘南ケアカレッジは新しく(2013年に)創設されていますので、私の中では新しい学校のつもりでした。なぜ古いと思われたのか?それはどういう意味なのか?いくつものクエスチョンマークが頭の中をよぎりました。ホームページが古く思えたのか(シンプルで凝っていないのはたしか)、それとも学校が入っているビルが古く見えたのか(たしかに築50年近い古い建物です)、またはカーテンの染みが目に入ったのか?Aさんの友人に聞いてみないと真相は分かりませんが、こうして生の声を聞き、第三者からの目線で改めて自分たちを見てみることも大切ですね。
良く考えてみると、湘南ケアカレッジは驚くほど変わっていないのです。先生方も10年前からほとんど変わっていませんし、受講料も変わっていません。教えている内容は少しずつ変化しているとはいえ、本質的な部分は変わっていません。もちろん、介護・福祉教育に対する熱い気持ちも変わっていません。
変わらないことをモットーにしてきたわけではありません。先生方が次々と辞めては入るを繰り返したり、キャンペーンなどと言って受講料を上げ下げしたり、本業よりも儲かりそうな事業に乗り移っていないだけです。大切な人たちに、大切な人たちと、大切に想うことを提供し続けた結果、ほとんど変わらずにここまでやってこられました。正直に言うと、この先も変わらずにいられるか分かりません。生き残るためには変わらなければならないかもしれませんし、変わらなければならないならば私たちの存在意義はないのかもしれません。この頑固なまでの変わらなさが、古いと思われる原因なのかもしれませんね(笑)。
あくまでも個人的な意見や考えですが、私たちは変わろうとし過ぎなのです。私たちというのは、企業や経営という観点から言っています。時代の変化に合わせて、強迫観念のように変わらなければならないと思っている企業や経営者がほとんどではないでしょうか。「何世紀も前の恐竜を例にとって、強い者が生き残ったわけではなく、環境に適応できなかった者が滅びたのだ」という言説が好まれるのは、そういう理由です。
私たちはどこか今の自分に自信がなくて、このままだと将来は明るくないと感じているようです。だからこそ、自ら変わらなければ時代に乗り遅れてしまうと思うのですが、どこまで行ってもその考え方は後追いに過ぎません。私たちが目指すべきは、ずっと変わらずそこにいることです。老舗と呼ばれるお店や企業はそうしてきたはずです。もし変わらないことで絶滅してしまうなら、それは運命と思ってあきらめるしかありません。古いと思われようと構いません。湘南ケアカレッジは介護スクールの老舗として、最高の福祉教育をいつまでも届け続けたいと思います。