
6年前に介護職員初任者研修を修了した卒業生さんが、今年は実務者研修に参加してくれました。最後の授業のリアクションペーパーに、「講師の人たちの雰囲気と志が変わっておらず、安心して授業を受けられました」と書いてくれました。ここで言う志とは、おそらく介護に対する向き合い方や心構え、情熱のようなものを意味するのだと思います。そうした志を私たちが忘れることなく、6年前と同じように生徒さんに伝えられたことは、嬉しい限りです。
この6年間で世の中は大きく変わりました。私たちも変わらなければならない部分もありますが、大切なことは変わらなくて良いのです。
まずこの6年間において、介護職員初任者研修の無料化が急速に進みました。最初は人材紹介のルートに乗ると受講料をキャッシュバックします、という形でスタートしました。大手スクールが教育から人材紹介に舵を切ったことで、受講料は無料でも良いからとにかく紹介できる人が欲しいとして、キャッシュバックキャンペーンができたのです。さらに人材会社が介護の学校をつくり、人材募集の入口として使い始めたことで、この流れは加速していきました。
無料化に追い打ちをかけたのは、公的な機関(都道府県や市区町村、ハローワークなど)の補助金や助成金です。東京都人材センター経由で申し込むと受講料は無料ですし、まちだ介護チャレンジも同様です。ハローワークがキャッシュバックする教育訓練給付金は、当初は受講料の20%が返還される穏当なものでしたが、数年前から特定一般教育訓練給付金(40%)や専門実践教育訓練給付金(50%)が出てきました。制度はますます複雑になり、年間200億円以上の税金を使いながら教育の価値を下げる方向に進んでいます。もう私たちは自分でお金を払って学ぼうとはしなくなりました。
もうひとつ、この6年間で教育のオンライン化も進みました。zoomなどのオンラインで受ける研修が増え、その手軽さに慣れてしまうと、わざわざ交通費を払って、時間を使って、教室に行って学ぶことが面倒くさくなるのです。同じ場所で一緒に学ぶことでしか得られない臨場感やクラスメイトのつながりなど、失われたものも多いのですが、それ以上に気楽さやコスパの良さを選ぶのが人間という生き物です。さらに言うと、動画であれば後からいつでも観られますし、倍速で見ることもできますから、ライブである必要もなくなります。さすがにボディメカニクスや実技演習などはオンラインや動画では学びづらいのですが、ほとんどの教育コンテンツはzoomか動画などのオンラインで済んでしまうのが現状です。ケアカレナイトなどに卒業生さんが来なくなったのも、このオンライン化が一因となっていると私は思います。
介護職員初任者研修など教育の無料化とオンライン化が同時並行で進んでいる中、湘南ケアカレッジとしてもアップデートしながら変わらなければいけませんし、変わってはならないこともあると思います。「世界観が変わる福祉教育を提供する」という湘南ケアカレッジの理念は、変わってはいけないことのひとつです。私たちにしかできない福祉教育を提供したいと思ってスタートしたのですから、その志は持ち続けなければいけませんね。6年前の卒業生さんから「先生方の志が変わっていなくて良かった」と言ってもらえたことは、私たちは間違っていないということの証明でもあるのです。志高く教え続けてくださっている先生方には感謝しかありません。ありがとうございます。